談話
九州朝鮮中高級学校「無償化」裁判の福岡高裁判決に対する書記長談話
10月30日、国が朝鮮学校を高校無償化の対象に指定しなかったことは違法として九州朝鮮中高級学校の卒業生68人が損害賠償を求めた訴訟の福岡高裁(矢尾裁判長)は、一審判決を追認し、学校側の請求を棄却するきわめて不当な判決をまたも行った。
裁判長は、公安調査庁の資料や国会答弁等から朝鮮民主主義人民共和国や朝鮮総連が朝鮮学校の教育内容や財政に影響を与えていると文科省大臣が判断した点を「不合理とは言えない」と指摘し、不指定処分にしたことは「裁量権の範囲を逸脱し、乱用したとは認められない」と述べ、広島朝鮮学園らが広島高裁に起こした同様の訴訟での判決に追随するものであり、断じて容認できない。さらに今回の裁判で不指定処分を行った当時の下村博文文科大臣等の証人尋問や学校の現場検証の申請を却下し、当事者から直接話を聞く機会さえ放棄した裁判所は、この訴訟に十分向き合ったとはいえない。
10年に民主党政権が高校無償化を導入した当時、対象となるには、学校の授業日数や財政運営資料の作成等を定めた文部科学省令規定に基づき審査され、文科大臣から指定されることが条件であった。審査では「外交上の配慮等により判断すべきでなく教育上の観点から判断すべきだ」との政府見解が示されたものの政治的課題を理由に適用が保留された。そして、政権交代後の13年自民党政権は在日朝鮮人総聯合会との関係を問題視し、朝鮮学校を無償化する対象とするための省令規定を削除し、不指定処分を行った。
これまで東京、大阪、広島、愛知、福岡において、同種訴訟があり、原告側が敗訴している。朝鮮学校の生徒を高校無償化制度から排除することは、憲法14条、教育基本法4条に反する著しい人権侵害、民族差別である。また、朝鮮学校だけを排除した国の判断に対して、国連「子どもの権利委員会」、国連人種差別撤廃委員会、国連社会権規約委員会から適用基準の見直しを求める勧告が再三出されおり、司法は国際的な見解をふまえ判断を行うべきである。
日教組は、今回の福岡高裁判決に強く抗議するとともに、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するために、平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。
以上