談話

文科省「教師不足」に関する実態調査についての書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2022年02月02日

1月31日、文科省は「教師不足」に関する実態調査の結果を公表した。
21年4月の始業日時点で、全国の公立小中高校、特別支援学校では、全体の5.7%にあたる1,897校で、2,558人の教員が配置されていなかった。内訳は、小学校で1,218人、中学校で868人、高校で217人、特別支援学校で255人だった。このため、小学校では担任を配置できず、中学校では一部の授業が行えないなどの影響が出た。この不足に対して、各学校では少人数指導やチームティーチングのために確保していた教員を配置したほか、教頭などの管理職が担任を兼務することなどで対処した。
また、1か月経過後の5月1日時点では、全体の4.8%にあたる1,591校で2,065人の不足とわずかに改善したものの、小学校979人、中学校722人、高校159人、特別支援学校205人は不足したままであった。
あわせて調査された公立小中学校の担任の実態(21年5月時点)は、小学校では11.5%(3万826人)が臨時採用教員で、そのうちの1万6934人は定員内臨時採用教員であることが明らかとなった。また、中学校では、臨時採用教員が9.3%で、定員内臨時採用教員は8,271人であった。さらに、特別支援学級担任では、小学校で23.7%、中学校では23.9%が臨時採用教員と高い割合になっており、臨時採用教員頼みの現場実態が明らかになっている。
文科省は、「教師不足」によって「授業が停滞するといった深刻な状況は把握していない」としているが、この間学校現場からは、授業への影響のほか、業務量の増加、休暇取得への影響など、混乱している状況が報告されるとともに、改善を求める多くの声が寄せられている。また、養護教諭、事務職員等の欠員状況が調査されなかったことは遺憾である。
一方、不足の原因を「産休・育休や病休者数の教員が見込みより増加したこと、採用者数の増加に伴い講師名簿登録者数が減少していること」としているが、そもそも慢性的な「教師不足」の実態に問題があるのは明らかであり、「不足が生じているのは望ましい状態ではない」「各自治体は、正規比率を高める努力をして欲しい」と文科省が自治体へ対応を求めるだけでは何ら改善するものではない。
担任不在のままで新学期を迎えることは、児童・生徒、保護者にとっても大きな不安であり、年度初めの混乱は、その後の学級運営に長く影響するため、避けなければならない深刻な状況である。また、他の目的で配置されている教員や管理職を担任に配置すれば、本来の目的は達成できなくなる。管理職の中には兼務による過重労働で疲弊し、休職に至っている実態も報告されている。
新年度まで2カ月となった現在、「教師不足」で子どもたちや教職員への影響が出ないよう、早急な対応策が必要である。
「教師不足」の一因とされる教員免許更新制度の廃止も新年度に入ってからが予定されているが、その効果はすぐには表れない。さらに、採用試験の倍率低下や若者の教職離れの解消にむけ、実感できる学校の働き方改革としての業務削減・定数改善だけでなく、処遇改善も含め検討が必要である。
日教組は、引き続き、単組と連携しながら、ゆたかな学びの保障と持続可能性のある学校づくりにむけとりくんでいく。
以上

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