談話

中教審「学習指導要領等の改善について(答申)」に対する書記長談話

2008年01月17日

中教審「学習指導要領等の改善について(答申)」に対する書記長談話

2008年1月17日

日本教職員組合 書記長 中村 譲

本日、中央教育審議会は、学習指導要領改訂に向けた「答申」を文部科学大臣に対して行った。文部科学省は、今年度中に指導要領改訂を告示するスケジュール
を示しているが、「答申」では、「教育内容の改善」に関わることだけでなく、条件整備の必要性が強く唱えられており、「答申」から僅か2ヶ月で改訂作業を
完了させることはあまりに拙速であると言わざるを得ない。教職員定数増や「受験学力」「点数学力」からの脱却を図る具体的な施策等の総合的・抜本的な制度
改革を優先すべきである。

授業時間について、「答申」では「授業時間と学力の水準との間の因果関係は明らかではない」としながらも、
小学校・中学校ともに週当たり1?2単位時間の授業時数を増加し「知識・技能を活用する学習」を充実させるとしている。各学校では、地域や子どもの実態に
応じた学校行事や自治的諸活動が標準授業時数外の活動として行われており、授業時数増によって子どもたちの主体的な活動への影響が懸念される。国際的にも
「生活・社会で生きてはたらく学力」が求められる中、子どもたちの「学びの質」の転換を図るためには、単に授業時数を増やすのではなく、30人以下学級の
実現等の条件整備が必要である。

小学校「外国語活動」の導入について、「答申」では「各学校のとりくみにばらつきがある」として、機会均等
の確保から5・6年生に年35時間を位置づけた。しかし、文部科学省の「06年英語活動実施状況調査」では、5・6年生は平均14時間程度、54%が11
時間以下という状況であり、大幅な時数増による保護者・学校・企業等の過剰反応が子どもにとって過重負担になることが危惧される。「総合的な学習の時間」
の現行授業時数を維持し、「外国語活動」については、国際理解教育の一環として例示する扱いとすべきである。

対人関係の孤立化や情報モラルの低下、自己肯定感や自己実現の欲求が満たされないなど、子ども・若者をとり
まく課題は複雑化・深刻化している。今、私たちがすべきことは、学校・保護者・地域が一体となって子どもの成長に関わることであり、文部科学省をはじめと
する行政は、そのための支援策を講ずることである。現場では「総合的な学習の時間」が創設されて以来、保護者・地域とともに模索しながら実践を深め、実を
結び始めたところである。さらに充実を図るためには、学校裁量予算の拡充等が必要であり、政府・文部科学省に対して強く求めるものである。

私たちは、これからも保護者・地域住民と語り合う場を大切にし、平和・人権・環境・共生を尊重する社会の実現をめざし、現場からの教育改革をすすめていく。

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