談話

幼稚園教育要領および小学校・中学校学習指導要領告示に対する書記長談話

2008年03月28日

幼稚園教育要領および小学校・中学校学習指導要領告示に対する書記長談話

2008年3月28日

日本教職員組合 書記長 中村 譲

本日、文部科学省は、幼稚園教育要領および小学校・中学校学習指導要領を告示した。「改訂案」に対するパブリックコメントの締め切りから僅か12日での告
示であり、さらに「総則」を含むいくつかの部分において内容が付加されるという「修正」が入り、極めて異例の事態であると言わざるを得ない。

文部科学省は、「総則」の「道徳教育」に「我が国と郷土を愛し」という文言を付加した。その理由を「パブ
リックコメントで多くの意見が寄せられたから」と説明している。寄せられたすべての意見を示すことなく、「修正」理由を明らかにしないまま、告示で盛り込
むという手法は、「教育基本法政府法案」の作成過程を想起させるものである。また、小学校・国語では、「伝説」が「神話・伝承」と改められるなど、国によ
る一方的な伝統・文化の強調が見られる。

小学校・音楽では、「君が代」を「指導すること」が「歌えるよう指導すること」と変更された。音楽における
指導とは、「表現」と「鑑賞」であり、わざわざ「歌えるよう」を付加した意図が明確ではない。また、学校には、国籍や宗教等に関わってさまざまな子どもた
ちがいる中で、子どもの権利条約の観点からも公教育において子どもに歌うことを強制することはできない。

中学校・社会の公民的分野では、我が国の安全と防衛に続き「国際貢献」という文言が付加され、「国際貢献=
海外における軍事行動」という考えにつながりかねない。国際貢献とは、教育・医療・福祉を中心とする「民事」によるものであり、「軍事」の必要性を子ども
たちに考えさせるものにしてはならない。

日本教職員組合は、文部科学省・中央教育審議会に対して、30人以下学級を柱とした条件整備や「受験学力」「点数学
力」からの脱却をはかる総合的・抜本的な教育改革を優先すべきであると訴えてきた。教育とは、大人の考えを子どもに押し付けるものではなく、「学びの主体
は子ども」であることを社会全体で共有し支援していくものである。

私たちは、学習指導要領を大綱的基準として捉え、子ども・地域の実態に応じて創意工夫ある実践をおこなって
いくため、2年間におよぶ組織討議を経てつくりあげた「日本教職員組合カリキュラム提言」にもとづき、保護者・地域住民とともに子どもたちに「ゆたかな学び」を保
障する教育実践にとりくんでいく。

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