談話
新防衛計画大綱の閣議決定に対する書記長談話
新防衛計画大綱の閣議決定に対する書記長談話
2010年12月20日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
日本政府は12月17日、「新防衛計画大綱」と今後5年間の防衛費の総額などを定める中期防衛整備計画を閣議決定した。「新防衛計画大綱」は、北朝鮮や中国の動きを脅威と捉え、警戒・監視能力を高め、機動的に部隊を派遣する「動的防衛力」を掲げ、南西諸島までの防衛態勢の強化を打ち出している。「動的防衛力」の考えは、特定の脅威に軍事的抑止力を配備するというもので、「防衛大綱」策定(76年)以降基本としてきた専守防衛から脅威対抗型へ大きく転換したものといえる。
今回の大綱では、武器輸出三原則の見直しの記載は見送られたものの、憲法の枠内で抑制してきた専守防衛という防衛政策の基本的な考え方に修正が加えられた点で、容認することはできない。また、民主党マニフェストで示した、緊密で対等な日米関係を構築するため、日米地位協定の改定を提起するとしたことや「東アジア共同体」の実現をめざし、中国・韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係を築くとしたことからも逸脱するものである。「新防衛計画大綱」が、地域の不安定要因を作り出すようなことになれば本末転倒である。
さらに、中国の経済成長と軍拡政策や、休戦ラインが合意されていない黄海海域を中心とした北朝鮮、韓国の軍事的衝突といった東アジアの緊張関係が激化する中での「防衛計画大綱の転換」は、新たな政治的緊張を生み出す危険性がある。国際紛争を武力で解決しないという憲法の平和原則により、外交努力や経済・開発援助などによる「紛争防止」こそ力を注ぐべきである。
私たちは今回の政府の動きについて、平和フォーラムとともに「武力で平和は守れない!」との考えにもとづき、引き続き平和外交政策を求め、「新防衛計画大綱」や中期防衛力整備計画で具体的に進められようとする防衛政策の転換に対し、東アジア共同の安全保障を求めるとりくみを強めていく。