談話

国際学習到達度調査(PISA2009)の結果公表に対する書記長談話

2010年12月08日

国際学習到達度調査(PISA2009)の結果公表に対する書記長談話

2010年12月7日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、経済協力開発機構(OECD)は、65の国・地域の15歳児(高校1年生)を対象に昨年実施した国際学習到達度調査(PISA2009)に関し、読解力を中心に、科学的リテラシー、数学的リテラシーの3分野についての調査結果および分析データを公表した。初回のPISA2000以降、調査への参加が年々拡大しており、年度ごとの比較や国・地域の順位をもって学力を評価することは意味を持たなくなっている。

調査結果に関し、文科省は、「3分野とも国際的に見て『上位グループ』にあり、前回のPISA2006に比べ平均得点が上昇している。とりわけ読解力は大幅に上昇し、読解力を中心に日本の生徒の学力は改善傾向にある」としている。また、読解力につながる「読書活動」についても、肯定的に回答した割合がほとんどの項目でOECD平均よりも多く、2000年調査よりも増加したとしている。しかし、OECDの分析によれば、日本は得点が上がったとはいえ統計的に有意差はなく、改善された国に位置づけられてはいない。

前回調査で明らかとなった上位層と下位層の学力格差については、読解力のレベル1未満の割合が減少し、レベル5以上の割合が増加しているものの、上位の国・地域のレベル1未満の割合は、上海0.7%、韓国1.1%、フィンランド1.7%と極めて少ないのに対し、日本は4.7%と高い数値となっている。また、読解力の中で「情報へのアクセス・取り出し」に比べ、情報の関係性を解釈したり活用したりする「総合・解釈」「熟考・評価」の正答率が低くなっている。学力の底上げや学びの質が依然として日本の大きな課題と言える。

EI(教育インターナショナル)は、下位層の底上げとして強制的な補習等の性急な対応策をとることに対し懸念を表明している。子どもの学ぶ意欲や学びの過程、学びあう人間関係づくりを大切にし、社会に出て生きる力につながる「ゆたかな学び」にこそ目を向けなければならない。子ども一人ひとりの「ゆたかな学び」を保障するためには、過度の競争で教職員や子どもに責任を負わせるのではなく、教職員が子どもと向き合う時間や教材研究・授業準備等の時間の確保が重要である。

授業時数増となる学習指導要領改訂に伴い、少人数学級の実現や教職員の定数改善など学校現場を支援する教育条件整備や教育施策等が強く求められる。

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