談話

「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」等の閣議決定に対する書記長談話

2013年12月18日

「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」等の閣議決定に対する書記長談話

2013年12月18日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

日本政府は、12月17日、「国家安全保障戦略(以下、NSS)」「新たな防衛計画の大綱(以下、防衛大綱)」及び今後5年間の防衛費の総額などを定める「中期防衛力整備計画(以下、中期防)」を国家安全保障会議(日本版NSC)と閣議で決定した。

NSSは、アジア太平洋地域の安保上の課題として朝鮮民主主義人民共和国の軍事力増強と、中国による尖閣諸島を含む東シナ海上空への防空識別圏の設定などを「国際社会の懸念事項」として挙げ、「積極的平和主義」を基本理念に国際社会の平和と安定に自ら進んで貢献するとしている。これは、安倍政権が目論む、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を視野に入れたものである。

さらに、国家安全保障を支える社会的基盤を強化する目的として、「我が国と郷土を愛する態度を養う」という愛国心に関する条項を挿入している。これは、国民に対して国土防衛への協力を義務付け、国民より国家を優先する自民党「日本国憲法改正草案」の先取りであり、個人の内心の自由を保障する平和憲法を蔑ろにする断じて容認できないものである。また、戦後日本の平和主義に基づいた武器輸出三原則を緩和し、新たな武器輸出管理原則を策定する方針を示したことも看過できない。

「防衛大綱」では、「動的防衛力」に代わり、海洋進出を強める中国を念頭に、水陸両用部隊の増強による島しょ防衛の強化及び陸海空自衛隊が連携して機動力のある装備や組織を充実させる「統合機動防衛力」を打ち出している。そのため「中期防」によって、防衛費を大幅に増額し、上陸作戦に使う水陸両用車52両、部隊を輸送する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機、さらには上空から情報収集する無人偵察機3機の購入を計画し、東シナ海などでの警戒監視能力を高めるとしている。これらは憲法の平和主義を反故にし、いたずらに地域の不安定要因をつくり出し、日本を危険に晒す本末転倒のものであり、早急に撤回することを求める。

安倍政権は、歴史認識や領土問題などにより自らが生み出した緊張を口実に、国の安全保障政策の基本的な枠組みを変更し、新たな政治的緊張を生み出そうとしている。日本政府は、国際紛争を武力で解決しないという平和憲法の理念にもとづき、外交努力や経済・開発援助などによる「紛争防止」にこそ力を注ぐべきである。日本教職員組合は、安倍政権がすすめようとしている軍事大国化路線に断固反対するとともに、憲法が掲げる平和外交政策にもとづく防衛政策への転換を求めとりくみを一層強化していく。

以 上

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