談話

中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」に関する書記長談話

2013年12月13日

中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」に関する書記長談話

2013年12月13日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、中央教育審議会は総会を開催し「今後の地方教育行政の在り方について」の答申を行った。

教育委員会制度の在り方については、首長を教育行政の執行機関、教育長を首長の補助機関、教育委員会を首長の特別な附属機関とする改革案を提言している。一方、答申の中で改革案とは別に、教育委員会を執行機関として残す案を「支持する強い意見もあった」として記載されている。

戦前の反省に立って、教育が「不当な支配に服することなく」その自主性を保障し中立性を確保するために、合議制の執行機関である教育委員会制度が創設された。また、「本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして、党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでない教育」とする最高裁の判決もある。教育は、政治的党派性のある独任の首長から独立して、一個人の価値判断で決定するのではなく多様な意見や立場を集約した合議制によって方針決定することが重要である。

合議制の教育委員会の指揮監督の下に、教育長が教育委員会の職務権限に属する事務を掌るというシステムによって、教育行政が行われるのが制度本来の趣旨である。しかし、首長が事実上任命している教育長が実質的に教育委員会を仕切っている自治体があるのが実態である。いじめ等の問題をめぐって、「教育委員会は迅速に対応できない」として、教育委員会のあり方に問題が結び付けられているが、問題は教育長をはじめとする教育委員会事務局に起因している。このことは、大津市におけるいじめに関する第3者調査委員会報告においても、「重要なことは、教育長以下の事務局の独走をチェックすることであり、その一翼を担う存在として教育委員の存在は決して小さいものではないはず」と指摘されているところである。

答申は、首長と教育長の権限を強化するものであり、教育の継続性・安定性、政治的中立性の確保から極めて問題である。さらに、地方教育行政への国の関与に係って、「国がしっかりと公教育の最終責任を果たせるようにすることが必要であり、その権限を明確にするための方策を検討する必要がある」としており、この期に乗じて国の権限強化をはかるとすれば許されるものではない。

教育委員会制度のあり方については、教育の本質につながる大きな問題である。首長から独立した、合議制執行機関によって方針などが決定される教育委員会制度を存置し、その機能が発揮され活性化する方策を採ることの方が必要なことである。日本教職員組合は、こうした立場に立って、引き続き政党・関係機関に意見反映していく。

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