談話

安倍首相の靖国神社参拝に抗議する書記長談話

2013年12月27日

安倍首相の靖国神社参拝に抗議する書記長談話

2013年12月27日

 日本教職員組合書記長 岡本 泰良

安倍首相は、12月26日、現職の首相としては7年ぶりに靖国神社参拝を強行した。靖国神社参拝が政治、外交問題化していることを自覚しながらも、第一次安倍内閣時代に参拝しなかったことを「痛恨の極み」として、自らの信念にのみ固執して参拝したことは、どのような理由を挙げようとも、正当化することができない極めて独善的な行為である。日本教職員組合は、安倍首相の靖国神社参拝及びこれを容認する政府・自民党の一連の姿勢に抗議する。

参拝に合わせて安倍首相は、「中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは、全くありません」「中国、韓国に対して敬意を持って友好関係を築いていきたい」との談話を発表しているが、近隣諸国の人々の怒りは増大し、とりわけ中国・韓国など東アジア諸国との外交関係は悪化することは必至である。さらに、米国は10月にケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ヶ淵の戦没者墓苑を訪れ、靖国参拝の自粛を求めていた。それにもかかわらず、参拝を強行した安倍首相に対して「失望している」などと厳しく指摘している。

そもそも靖国神社は、犠牲となった兵士を「英霊」として祀ることで、国民を侵略戦争に駆り立てる役目を担っていた。さらに戦争犯罪者として裁かれたA級戦犯者を合祀するなど、東京裁判の正当性やアジアへの侵略戦争という歴史認識を真っ向から否定する宗教施設である。この靖国神社に内閣総理大臣として参拝することは、侵略戦争を美化し歴史を歪曲しようとする極めて愚かな行為と言える。また、首相として靖国神社に参拝することは、政教分離の原則を定めた憲法を否定するもので、すでに2004年の福岡地裁、2005年の大阪高裁に置いて違憲判断が下されている。

安倍政権は、歴史認識や領土問題などを口実に、国の安全保障政策の基本的な枠組みを変更し、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置、特定秘密保護法の制定、防衛費の大幅増、武器輸出三原則の緩和、そして憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認など日本の「軍事大国化」をすすめている。今回の靖国参拝も、ナショナリズムを煽り、愛国心を強制しようとする一連の流れと軌を一にするものである。

しかし私たちに、今求められているのは、戦争放棄と平和主義、基本的人権の尊重、国民主権を三大原則とした日本国憲法の理念のもとに、差別や排外主義を克服した共生社会の実現に向け、全力を尽くすことである。いたずらに敵対心を煽り近隣諸国の緊張を高めることではない。

日本教職員組合は、今後も「教え子を再び戦場に送るな!」のスローガンのもと憲法理念の実現をめざすとともに、憲法改悪阻止に向けて全力でとりくみをすすめていく。

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