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談話

中教審教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に対する書記長談話

2016年09月09日

中教審教育課程部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に対する書記長談話

 2016年9月9日

 日本教職員組合書記長 清水 秀行

中教審教育課程部会は、8月26日付でこれまでの審議経過をとりまとめ、本日「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」として公表した。今年5月の文科大臣による脱ゆとり宣言を受け、指導内容や授業時数の削減をすることなく、グローバル化の進展や人工知能(AI)の進化等の社会的背景の変化を理由に、教育内容を大幅に変更し、指導方法や評価にまで言及している。また、よりよい社会を創るとして「社会に開かれた教育課程」の実現と、「学びの地図」としての活用をはかるとしている。人材育成が前面となり、学ぶ主体である子どもの視点が欠如していると言わざるを得ない。

「審議のまとめ」は、育成すべき「資質・能力」を前面に打ち出し、「主体的・対話的で深い学び」を実現するとしてアクティブ・ラーニングの必要性を強調している。教育現場には様々な子どもたちがおり、そこから子どもたちとの授業づくりが始まる。本来、ゆたかな学びは、子どもの実態から出発し、実践を積み重ねるべきであり、学習指導要領はあくまでも大綱的基準として、指導方法や評価まで立ち入るべきではない。また、十分な検証もないままに行われる高校の教科・科目構成の大幅な見直しは、生徒・教職員に多大な負担を強いることになる。

カリキュラム・マネジメントを各学校で行うとしているが、PDCAはもともと労務管理の手段であり、現場の管理強化が懸念される。現在でも学校では、地域との連携等を考慮した教育課程を編成している。その充実をはかるためには新たな手法の導入ではなく、学校裁量の拡充等こそが必要であり、政府・文部科学省に強く求める。

小学校の外国語教育は「高学年における、外国語科(年間70単位時間)、中学年における外国語活動(年間35単位時間)」を導入することとしている。安易に時数を増加し、運用で解決するとして過密で余裕のない学校現場に押し付けることは、さらなる負担を強いるものでしかない。また、モジュール授業の導入や土曜日の活用、週あたりの授業数増、長期休業中の学習などは、子どもたちからますますゆとりを奪い、追いつめるものでしかない。学校5日制の意義をなし崩しにしてはならない。

先行実施が決定している「特別の教科 道徳」は、「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告により、記述式による評価を行うことが示された。記述式であっても、子どもの内面にかかわる価値観や規範的な意識を評価すること自体なじむものではない。評価のあり方・方法については今後も十分な議論を重ねることが必要である。

いじめ・虐待・不登校など子どもをめぐる課題は複雑化・深刻化している。また経済格差による教育格差は子どもの学習権すら脅かしている。今後、「審議のまとめ」にもとづき、学習指導要領が改訂されることになるが、子どもの実態と学校現場の状況を反映したものでなければならない。また、教職員が子どもと向き合う時間や、子どものゆたかな学びを保障するための教材研究等の時間の確保などの教育条件整備こそ重要である。

日本教職員組合は、子ども・地域の実態に即したカリキュラムづくりが可能となる教育施策・条件整備を求めるとともに、子どものゆたかな学びを保障するため、保護者・地域の方々との社会的対話を継続し、日々の教育実践をすすめていく。

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