談話

四国電力伊方原発3号機の再稼働に抗議する書記長談話

2016年08月12日

四国電力伊方原発3号機の再稼働に抗議する書記長談話

 2016年8月15日

 日本教職員組合書記長 清水 秀行

8月12日、四国電力は、活断層の存在や避難計画の問題など、多くの県民、地元住民の反対や不安の声を無視して伊方原発3号機の再稼働を強行した。東電福島第一原発事故の実態と教訓を顧みることなく、住民の命と暮らしを危険に晒す暴挙に断固抗議する。

伊方原発の沖合には、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」があり、巨大地震が起こる可能性は十分にある。また、南海トラフの地震の想定震源域にも近く、重大事故の可能性が指摘されている。中央構造線上にあるとされる日奈久・布田川断層帯で起こった4月の「熊本地震」では、震度7で地震動の最大加速は1,580ガルを記録した。伊方原発の基準地震動は、東日本大震災後570から650ガルに引き上げられたが、「中央構造線断層帯」が引き起こす地震動は、それらを上回る可能性があり、東電福島第一原発事故に続く原発震災が強く懸念される。

伊方原発は東西に細長く険しい佐田岬半島に立地しており、原発事故時の住民避難や収束要員の支援などが十分に対応できないという問題がある。地震による土砂崩れや路肩崩壊、橋梁破損等による道路の寸断などによって、地域住民が孤立する危険性は高く、津波の可能性も危惧される中で、県が策定した船舶を利用する大分県などへの避難計画は、実効性に乏しい。また、伊方原発3号機は、使用済み核燃料を再処理したMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を使うプルサーマル発電であり、危険性は高い。

こうした避難計画の課題さえ解決できずに強行される再稼働は、住民の命を軽視するものであり、断じて容認できない。地元紙の県民世論調査においても、「再稼働すべきでない」「どちらかというと反対」という回答が半数を超えており、県民合意にはほど遠い結果となっている。早急に運転を中止し、1号機と同じく廃炉を決定すべきである。

「熊本地震」などによって再び原発への不安は高まっている。伊方原発の再稼働に対しては、愛媛県の松山をはじめ、大分、広島の各地裁で「中央構造線断層帯」の活発化を危ぶむ住民が運転差し止めを求める仮処分を申し立てている。また、脱原発を標榜し、7月に現職を破り当選した三反園訓鹿児島県知事が、九電川内原発1、2号機について、「熊本地震を受け、原発をいったん停止して再検査し、活断層の調査をすべきだ」「安全性が確保されない原発は動かすわけにはいかない」と発言したことは当然のことである。

関電高浜原発3、4号機の稼働を差し止めた大津地裁の判断は、発電の効率や経済的利益を優先することはできないとし、原子力規制委員会の「新規制基準」についても「福島第一原発事故で得られた教訓の多くが取り入れられておらず、過酷事故対策が不十分である」としている。

こうした住民の声、司法の判断、行政責任者の姿勢があるにもかかわらず、再稼働に「安全」のお墨付きを与える原子力規制委員会、民意を問うことなく安易に再稼働を許容した地元自治体首長、原発稼働を推進する政府の姿勢に対しても強く抗議する。

伊方原発の再稼働は、原発に依存しない社会を築いていこうとする多くの住民の意見を無視し、生活の安全を蔑ろにするものであり、原発の安全性に絶対はないという福島の現実を顧みない全く無責任な判断と言わざるを得ない。

日本教職員組合は、「核と人類は共存できない」との立場で、伊方原発の即時停止を求めるとともに、すべての原発の再稼働中止と再処理からの撤退、核廃棄物の安全な処理の促進、再生可能エネルギー政策への転換など脱原発社会実現へむけたとりくみをより一層強化していく。

                               以上

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