談話

高校教科書検定の結果公表に対する日本教職員組合書記長談話

2007年04月02日

高校教科書検定の結果公表に対する日本教職員組合書記長談話

2007年4月4日

日本教職員組合 書記長 中村 譲

3月30日、文部科学省は、2008年度から使用される高校教科書(中学年用)の検定結果の概要を公表した。今回の検定では、7つの普通教科と4つの専門教科で、計224点が申請され、不合格となった「生物?」の2点を除く、222点が合格した。

日本史教科書では、太平洋戦争末期に沖縄でおきた住民の集団自決に日本軍が関与したとする記述に対し、初めて検定意見がつけられ、これを扱った5社7点の教科書すべてから日本軍の直接的な関与に関する記述が修正・削除された。

集団自決における日本軍の関与は、戦争体験者からの聞き取り調査や沖縄戦研究ですでに明らかになっている。この検定結果は、沖縄戦の実相を否定し、歴史を美化・歪曲するものである。また、悲惨な体験をした沖縄の人々の思いを踏みにじるものであり、断じて容認できるものではない。

文科省は、自決を命じたと言われてきた元軍人やその遺族が2005年に名誉毀損を訴えて起こした訴訟を根拠に、「軍関係者の新たな証言などから、日本軍が集団自決を命令したかどうか定かでなくなってきたため」と説明している。しかし、裁判は現在も係争中であり、文科省自らが定めた検定基準「未確定な時事的事象について断定的な記述をしているところはないこと」にも矛盾している。

さらに、昨年度に引き続き、自衛隊のイラク派兵や首相の靖国参拝、南京大虐殺などに関する記述に関し、政府見解に沿う検定意見がつけられた。

政府・与党は、2006年12月に「改正教育基本法」を強行成立させ、さらには憲法改悪にまで踏み込もうとしている。こうした一連の政治的意図が教科書にも顕著に表れてきており、学校現場に一方的な歴史観を押し付けるものである。

2007年度の高校教科書(高学年用)、さらには2007年度の小学校教科書、2008年度の中学校教科書検定にも影響を及ぼしかねず、極めて問題であると言わざるをえない。

日本教職員組合は、一人ひとりの子どもたちが平和な未来に向かって歩むために、アジアをはじめ、世界の平和と安定、共生の社会を実現する主権者を育むことが重要であると考える。そのためには、歴史教育が史実と真理・真実にもとづくものでなければならない。

わたしたちは、戦争を肯定・美化する動きに抗し、「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、平和・人権・環境・共生の教育実践にいっそう取り組んでいく。

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