弁護団コラム

弁護団コラム(第11回)著作物の利用について(その3)

2022年11月09日
教職員: 第1回は、組合主催の研究会で担任の子どもの作文を題材に発表する場合につき、第2回
  は、学級通信や学校のウェブサイトに子どもの作品を掲載する場合につき、法的な問題点をお聞きしましたが、今回は、学校の授業との関連でお尋ねします。
弁護士: はい、どうぞ。
教職員: 学校の授業を録画した上で、欠席した子どもに対し、後日学校で録画を視聴させる場合に
  は、著作権の関係で新たな問題は発生しないのでしょうか。
弁護士: 欠席した子どもへの授業録画の提供は、学校の授業の一形態といえますので、新たな問題
  は発生しません。大丈夫です。
教職員: 最近、学校ではICT(情報通信技術)の活用が活発に議論されていますが、欠席した
  子どもだけではなく、子どもたち全員の復習のために、教職員がインターネットを通じてアクセスできるウェブサイトに著作物を含む授業の動画をアップロードしたり、動画を配信したりする場合はどうでしょうか。
 
弁護士: 学校の教育活動の一環として行われていれば、授業過程での利用として、著作物を含む授
  業の動画を復習のために使うこともできます。ただし、視聴対象者を当該校の子どもに限る必要がありますし、学期中など復習のために必要な期間内だけアクセスできるようにすることも必要です。また、動画には授業中の子どもたちの様子や音声が含まれていますので、子どもの個人情報やプライバシー保護の観点からは、IDやパスワードで動画へのアクセスを管理するなど、学外の第三者に見られたり動画が複製されたりしない工夫が必要になります。
教職員: これは第1回で説明があった公衆送信に当たると思いますが、著作物の配信自体は問題な
  いということですね。
弁護士: そのとおりです。学級の子どもたち全員がアクセスできたり、全員に配信したりすれば、
  公衆送信になりますが、授業の過程であれば著作物の利用も許されています。ただし、学校の授業の過程で子どもたちにインターネットを通じた著作物の公衆送信を行う場合には、学校の設置者が、学校単位で、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会に対して定額の「授業目的公衆送信補償金」を支払うことになります。
教職員: 教職員が自分の授業動画を教職員仲間に見せるために個人でウェブサイトにアップロードする場合はどうでしょうか。
 
弁護士: 授業の過程における利用ではないため、原則に戻って教材の著作権侵害の問題が生じます。さらに子どもたちの個人情報等の保護や公務員の秘密保持の問題も発生する可能性がありますので、個人の判断で授業動画をウェブサイトにアップロードするのは不適切です。
 
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