弁護団コラム

JTU弁護団コラム(第8回) 「法教育」シリーズ3

2022年04月21日

「法教育」って?-その他-
2022年4月21日
これまでのコラムで、消費者教育、模擬裁判をご紹介してきました。でも、法教育の授業にはまだまだたくさん種類があります。

その1つが「ルール作り」です。学校やマンションなど、生徒にとって身近な場所を舞台に、コーチや当番の決め方、ペットの飼い方、ゴミ出しなどのルールを自分たちで作ってみようという授業です。立場や視点を変えて考えたり、友達の意見に耳を傾けたりしながら、皆で1つのルールを作り上げます。授業が終わったときに、子どもたちに、ルール、つまり法は、上から制限したり規制したりするために存在するのではなくて、皆が少しでも気持ちよく幸せに生きていくために、自分たち自身で作っていくものなんだ、ということに気づいてもらえたらいいな、と思っています。

ルール作りから一歩進んで、少し学年が上の生徒向けになりますが、「模擬立法」という授業もあります。例えば、ヘイトスピーチの規制、少年犯罪と実名報道、といった教材を使い、表現の自由と、それと対立する利益~個人の尊厳やプライバシー権、少年の更生など~のバランスを考えながら、どのような規制をするのか、罰則はどうするのか等、グループごとに話し合って実際に法律を作って発表してもらいます。グループワークの前に、三権分立について復習したり、表現の自由の重要性、ヘイトスピーチや少年の可塑性(かそせい)についても勉強しますが、クイズ形式を取り入れたり、スライドを見てもらったりと、親しみやすい授業を工夫しています。

裁判所では、裁判のほかに、調停委員を間に立てて話し合いをする調停という手続きがあり、授業でも模擬調停を実施することも度々あります。例えば、クラス内でA君とB君の間にトラブルが発生したという設定で、A君チーム、B君チーム、調停委員チームに分かれ、作戦会議をやったり、調停で話し合いをしてみたり、という授業です。最初はお互いの要求がかけ離れていたり、「こっちが全部謝ればすむ」と考えて相手の無謀な要求まで全部のんでしまったりするのですが、調停での話し合いを繰り返しながらよい解決をめざすようになります。冷静に話し合いをすること、お互いの言い分を聞いて歩み寄って解決することは、簡単なようで実は結構難しいのですが、これからの社会で生きていくために大切な授業です。

主に法教育の授業の形式をご紹介してきましたが、テーマとしては、最近はハラスメントやいじめ、教育格差やジェンダー、デートDV、SNSにかかわっての諸問題などの授業の要請が多くなっていると感じます。またいつか機会があれば、ご紹介できればと思っています。

今回で法教育をテーマにしたコラムはいったん終了となりますが、最後に声を大にしてお伝えしたいことは、法教育は、子どもたちのためだけにあるのではなく、老若男女すべての人を対象にしている、ということです。そして、過酷な学校現場で働く方にこそ、ご自身に保障されている人権・権利について気づいていただきたい・・・。私の所属する弁護士会でも、法教育の一環として、教職員の方々向けの人権研修など実施していますが、こうした機会を利用していただければ幸いです。まず大人が幸せになることが、子どもたちの幸せにつながると信じています。

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