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教育インターナショナルアジア太平洋地域会議

2013/10/29

教育インターナショナルアジア太平洋地域会議
「万人のための質の高い公教育~アジア太平洋地域の社会的・経済的未来を築く」

2013年10月29日

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教育インターナショナルアジア太平洋地域(EIAP)の地域会議が2013年9月18日から20日にマレーシア・クアラルンプールで開催されました。これは、EIのアジア太平洋地域における最高の機関会議であり、4年に1度開催されます。過去4年間の運動の総括と今後4年間の運動方針を決定するとともに、EIAP地域の議長を含む地域委員を選出します。

今回の地域会議には、37カ国・地域の75加盟組織のうち、36カ国・地域の71組織が参加しました。会議テーマには、「万人のための質の高い公教育~アジア太平洋地域の社会的・経済的未来を築く」が設定されました。これは、2000年に164カ国の政府が2015年までに達成すると約束したミレニアム開発目標に由来しています。そのひとつには、すべての子どもに無償で初等教育を提供する、という目標があります。教育インターナショナル(EI)は、それを「万人のための教育(Education for All, EFA)」というスローガンの下、国際機関や各国政府と連携して運動をすすめています。しかし、児童労働、各国の財政不足、金融危機の影響、国際機関からの支援金の減額といったことから、現状ではその達成は非常に難しいと予測されています。

日本教職員組合は、本部から中村譲EIAP前議長、加藤良輔委員長、岡本泰良書記長をはじめとする8人、単組から5人の計13人の派遣団として、地域会議に参加しました。

開会式では、スーザン・ホップグッドEI会長から基調報告がありました。冒頭には、教職員組合の大きな課題として、宗教と教育権との衝突について述べました。女子に教育を受ける権利を求めたパキスタンのマララさんが襲撃された事件に象徴されるように、イスラム教原理主義の中には、女子教育を認めず、暴力を用いる者もいます。スーザン会長は、教育は人権のひとつであり、どの子どもにも保障されなければいけない、という点を強調しました。また、スーザン会長は、各国における教育予算の減額と、それに関連する教育の商業化・民営化の問題も提起しました。金融危機のあおりをうけ各国の教育予算が減額されています。一方で、EIが行った調査によると、タックスヘイブンなどの税回避措置を使って本来収めるべき税金を逃れる富裕層・多国籍企業の存在が明らかになりました。国の税収が減り、教育予算が減らされる、さらに、教育を商業化・民営化する動きさえ生じる、という悪循環があります。会長は、これを断ち切る必要を指摘し、国際機関および各国政府に税回避措置への国際的な枠組みを設置するとともに、教育予算を増額することを求めるよう、加盟組織に呼びかけました。

続いて、シャシ・バラ・シン・チーフコーディネーターから、地域における課題や運動の総括について報告がありました。アジア太平洋地域は、アラビア半島のイスラム諸国から、太平洋の島々のオセアニア地域まで、地理的・民族的・文化的・言語的に複雑な様相を呈しています。シャシ・チーフコーディネーターは、EFA実現にむけたとりくみは確実に進展しているが、その一方で無資格教員の採用など教職の脱専門性がすすんでいることについて述べ、教育の質が問題になっていると指摘しました。また、アジアの国々では女性・女子に対する差別が根強く、ジェンダー平等も引き続き運動の柱として位置づける必要性があると強調しました。さらに、いわゆる途上国のみならずOECD加盟国においても、労働組合権が侵害される事例が多々見られ、ILO・ITUCとのいっそうの連携が重要であるという認識を示しました。

小地域ごとの分散会も開かれ、日本教職員組合団は、モンゴル・香港・台湾・韓国の6組織とともに、「北アジア小地域分散会」に参加し、労働組合としての運動の課題や教育問題について共有化しました。同分散会の報告者は岡本書記長がつとめ、全体会の場で分散会報告を行い、社会的対話の必要性を再確認し、小地域での連帯を呼びかけました。また、テーマ別の分科会も開催され、日本教職員組合団は、加藤委員長が議長を務めた「教育への投資を通した、公正で平等な社会の構築」に参加しました。当該分科会には、スリランカ・ネパール・フィリピン・ソロモン諸島・キリバツ・オーストラリア・日本の7組織が参加し、不十分な教育予算・完全無償教育の必要性など、教育に関わる諸課題を参加者で再確認することにはじまり、公正で平等な社会の構築には、社会的対話の促進と子どもの人権である教育という視点の重要性を提言しました。

今回の地域会議をもって、中村議長は退任され、岡本書記長が新議長として選出されました。中村前議長は、4期10年にわたり、アジア太平洋地域におけるEI加盟組織の連帯と子どもたちの教育権の保障のために働いてこられました。岡本新議長は、就任挨拶にあたり「平和・人権・環境・共生、そして民主主義が尊重される社会を形成することは、    21世紀に生きる私たちの使命です。それを実現するためには教育が何よりも重要であり、学校はその象徴的存在でなければなりません。」という力強い決意表明を行いました。

 

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