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TALIS 2013 結果発表 ~社会的対話を通した、教職員の労働条件の改善と子どもたちのためのゆたかな教育を

2014/06/29

TALIS 2013 結果発表

~社会的対話を通した、教職員の労働条件の改善と子どもたちのためのゆたかな教育を

 2014年6月25日

集経済協力開発機構(OECD)は、2014年6月25日にTALIS(国際教員指導環境調査:政府訳)の結果を公表しました。

TALISは世界最大規模の教員の労働条件に関する国際調査であり、日本は今回初めて参加しました。日本教職員組合は、日本の参加を歓迎するとともに、見解(下記参照)を発し、教育インターナショナル(EI)とともに記者会見を行いました。また、OECD教育局局長のアンドレアス・シュライヒャーさんと意見交換の場を持ちました。

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シュライヒャーさんは、TALISの結果について「教職員に関する政策をつくる最善の方法とは」というプレゼンテーションを行い、当調査の目的と概要を紹介しました。また、日本の教員は自己効力感が低いこと、研修を受けたいと希望しているにもかかわらずその機会が乏しいこと、仕事量が他国に比べてひじょうに多く、とくにカリキュラム外の活動がその原因であること、といった日本に特異な結果について指摘しました。

プレゼンテーションに続いて、シュライヒャーさんと加藤中央執行委員長は、教職員に関する諸課題および日本の教育の改善に関する意見交換を行いました。加藤委員長は、「日本教職員組合にとって、インクルーシブな教育を達成することは最大課題のひとつです。インクルーシブな教育とは、すべての子どものニーズを満たすことです。教職員は、すべての子どもに丁寧に対応したいのです。そのためには、少人数学級を推進し、教職員の人数を増やさなければなりません。」と述べました。

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記者会見では、EI上級顧問のジョン・バングスさんがTALISに関する意見を表明しました。そして、政策立案者は教職員組合との社会的対話を持つことが重要であると強調しました。岡島書記次長は、TALISに参加したことが、ゆたかな学びの追求と教職員の労働条件改善につながるきっかけになるという認識を示しました。

TALIS結果は、学校の実態を明らかにしました。日本教職員組合は教職員の労働条件を改善し、子どもたちのためにゆたかな教育を保障するため、教職員の代表として社会的対話に参画していきます。



OECD「TALIS調査」に関する日本の教育課題

日本教職員組合

◇TALIS調査への参加について

日本教職員組合は、OECD国際会議の場において、日本もTALIS調査に参加することの意義を発言してきた(日本は2008年第1回調査に不参加)。PISA調査で国際的な学力の問題が取りざたされる中、参加国・地域の単なる得点・順位に一喜一憂するのではなく、各国の教育政策や教育を取り巻く状況を関連づけ課題を明らかにすることが重要であるとの考えからである。教職員の労働条件および学校の学習環境に関する国際比較により、日本の学校現場における課題が明らかとなり、具体的な教育条件の整備・改善につながることを望む。

1.校長への調査項目について

「校長としての実力発揮にとっての障壁」の項目では、「不十分な学校予算や資源(84.2%)」「政府の規制や政策(64.8%)」に多くの声があげられている。

「不十分な学校予算や資源」については、さまざまな地域の子どもを抱える学校の現状から、教職員の増員が必要であると考えていることのあらわれである。

「政府の規制や政策」については、近年の学習内容、教員免許の在り方、全国学力調査など、さまざまな教育政策について、現場からのボトムアップではなく、政治主導を背景とした文科省によるトップダウンの政策が強まっていることへの懸念のあらわれではないか。学校現場で行いたい教育活動との齟齬があったり、人的整備などが不十分なまますすめられていたりしており、教職員・子どもへの負担が問題となっている。校長もこうした認識に立っていることが伺える。

2.職能開発(研修)について

教員の職能開発のニーズは、諸外国に比べ非常に高い割合となっている。「担当教科の分野に関する知識と理解」「担当教科等の分野の指導法に関する能力」は5割を超え、他の項目でも高い割合を示している。一方、「職能開発の費用が高すぎる」「職能開発の日程が仕事のスケジュールと合わない」との声が多くあげられている。4.で明らかなように日本の教員は多忙な状況にあり、研修に行きたくても、時間的・精神的にゆとりがないことのあらわれである。主体的な研修のあり方を含め、自主的に研修できる条件整備(ニーズに合った研修機会の設定、研修を受けられるための日常の勤務改善など)が求められる。

3.教員への評価とフィードバックについて

各学校において、授業実践を観察し合い改善を図るためのとりくみが積極的に行われている。教員同士が互いに学びあい、教員としての力量や専門性を高めあう重要なとりくみである。一方、教育の営みは、子どもたち一人ひとりの能力を伸ばし、その人格の完成をめざすことにあり、何をもって評価するか難しい側面がある。教員評価の賃金への連動については、こうした教育のあり様から慎重に検討すべきである。賃金に連動させる場合には、制度設計にあたり教育現場の特性等をふまえた検討が必要である。特に、5原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性、合目的性)の確保、2要件(労使協議制度、苦情処理制度)の構築を行う必要があると考える。

4.教員の仕事の時間配分について

日本の授業時間は参加国とあまり変わらないにもかかわらず、日本の教員の勤務時間(53. 9時間)は参加国(平均38.3時間)の中で最長となっている。その要因として、生活指導、進路指導、登下校指導、給食指導等の時間が多く、教職員定数の改善、少人数学級の推進が必要である。また、「課外活動の指導に使った時間」が参加国平均の3倍以上となっている。課外活動(スポーツ・文化活動)が多いのは、部活動である。部活動は、学習指導要領に学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう留意するとされているが、教育課程内の活動ではない。そのような部活動を教員が行っているのは、参加国の中で日本だけではないか。現行法令等と実態との乖離を解消することが喫緊の課題である。部活動については、社会体育への移行も含め検討すべきである。

5.教員の自己効力感と仕事に対する満足度について

・教員の自己効力感は、「生徒の主体的学習参加の促進」に関するどの項目においても、参加国に比べかなり低くなっている。一方で、「指導・学習に関する教員の個人的な信念」に関する項目では、9割を超える教員が子どもの主体的学びが重要であると回答している。「児童生徒に対して、個別的できめ細かに対応する時間的余裕がない」「教材研究、授業準備の時間が不足している」との声が以前よりあげられている(2005年・労働科学研究所調査)。子どもが主体となる学びの重要性を教員が認識していながらも、一人ひとりの子どもへの支援や教材研究・授業準備に十分な時間がとれず、現実とのギャップの中で自己効力感が持てていないのではないか。教職員定数の改善や少人数学級の拡充等の教育条件整備が求められる。

・仕事に対する満足度に関し、「全体としてみれば、この仕事に満足している」との回答は、日本85.1%(参加国平均91.2%)となっている。一方で、「現在の学校での自分の仕事の成果に満足している」との回答は、日本50.5%(参加国平均92.6%)となっている。また、「もう一度仕事を選べるとしたら、また教員になりたい」との回答は、日本58.1%、参加国平均77.6%より低くなっている。こうした回答は、「教員の働きがいに関する意識調査」結果において、「仕事に生きがい」を感じている割合が高く非常に高い意欲を持って仕事に臨んでいることが明らかになった一方で、「自分が理想とする仕事の状況と現実とのギャップが大きい」と感じている割合も高いことが分かった。日本の教育の現状の課題として分析する必要がある。

※「教員の働きがいに関する意識調査」:2010年11月~2011年1月に日本教職員組合が(社)国際経済労働研究所の協力を得て実施。

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