談話

長崎「被爆体験者」訴訟の長崎地裁判決に対する書記長談話

2024年09月09日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

   9月9日、長崎での原爆投下により「援護対象区域外」で被爆した44人の原告らが、長崎県、長崎市に対し被爆者健康手帳の交付等を求めた訴訟(被爆体験者訴訟)で、長崎地裁(松永晋介裁判長)は、被爆地域外における「黒い雨」の降雨に関する証言調査や原爆投下当日の風向等をふまえ、「長崎原爆由来の放射性降下物が降下した相当程度の蓋然(がいぜん)性が認められる」として、原告の一部を被爆者と認め、長崎県・市に手帳の交付を命じた。

 

    広島の「黒い雨」訴訟(21年7月)では、被爆者は「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(被爆者援護法1条3号による定義)であり、健康への被害が完全に証明されなくても、可能性の有無により手帳等を交付すべきとしていた。これまでの国の被爆者への対応は広島と長崎で異なっており、差別的な扱いが生じている現状にあった。

 

    今回の判決は、限られた地域での原告の一部(44人中15人)の手帳交付を認めるものであり、原告全員の願いを果たすものではない。原告は、国による一方的な線引きで「被爆体験者」とされ、原爆放射線による健康不安を抱えながら、様々な疾病に苦しみ、幾度も差別を受けてきた被爆者である。長崎県や長崎市の「被爆体験者に対し、放射線による健康被害があるという科学的根拠は示されていない」とのこれまでの主張は退けられたが、一部の原告のみではなく、原告全員が被爆者と認められ手帳が交付されることが早急に必要である。

 

    日教組はこれまで、被爆二世教職員の会や原水禁とともに被爆者救済法のとりくみをすすめてきた。引き続き、日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、今なお健康不安に苛まれ、様々な疾病に苦しむ被爆者、被爆二世の思いを受け止めるとともに、あらゆる差別や排除を許さず、「非人道的兵器である核兵器の廃絶」という人類共通の目標実現のため、国際社会の一致した行動を求めて幅広い世論喚起等に継続的にとりくんでいく。

 

以上

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