談話

選挙権18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案の成立に対する書記長談話

2015年06月17日

選挙権18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案の成立に対する書記長談話

 2015年6月17日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、これまで20歳だった選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が国会において全会一致で可決成立し、来年の参議院選挙より適用されることになった。

世界192カ国の内、18歳以上に選挙権が認められている国が170カ国にも上るなどすでに18歳選挙権は世界の主流と言える。若者の政治参加を促進し国政への関心を高めること、また政治に広汎な民意を反映させることからも当然の措置である。

今後は、民法・少年法などの改正による成人年齢の引き下げの検討が本格化することが想定されるが、課題は山積している。子どもの権利条約第1条が、18歳未満を子どもと規定していることを考慮するとともに、子ども・若者の最善の利益を尊重しつつ、予想される社会制度等への影響を解消するなど、より慎重な検討が重要になる。

学校における主権者教育にも早急にとりくむ必要がある。しかし主権者教育の目的を、若者の政治参加促進のみに矮小化し、単なる選挙制度の周知や模擬投票の実施などに終始するべきではない。社会の一員として自立し、権利を行使することにより社会に積極的に関わろうとする主権者の育成こそ求められている。

高校生の政治活動の在り方については、文部省通知(1969年)で高校生の政治活動を学校の内外を問わず禁止しているが、文科省はすでに通知を見直すことを表明している。若者の政治参加を促すという法改正の趣旨に反しないよう注視していく必要がある。

主権者教育を行う際の、政治的中立性の確保は重要な課題である。「シティズンシップ教育」を必修教科とするイギリスでは、「論争的問題」を扱う題材とすることを求めるとともに、授業の際の教員の役割を明示し政治的中立性を確保するよう工夫している。また、ドイツでは、「教員は、議論の中で個人的な見解として自らの意見を表明することができるが、それが生徒を圧倒し、唯一の意見や理解として受けとめられたり、成績評価の基準となってはならない」としている。言うまでもなく日本においても、教育基本法第14条2項にもとづき、特定の政党や候補者を支持する教育をしてはならない。

一方で、総務省「常時啓発事業のあり方等研究会」最終報告書(2012年1月)において「政治的中立性の要求が非政治性の要求と誤解され、政治的テーマ等を取り扱うこと自体が避けられてきた傾向にある」と指摘されている。主権者教育を実践する中で、学校や教員がいわれなき批判に晒されることのないよう、政治的中立性の確保に関する社会的合意形成が急務である。

日本教職員組合は、平和で民主的な社会を形成する主権者を育む教育の重要性を訴え、実践を積み重ねてきた。今後は、主権者教育として憲法教育・労働者教育・消費者教育などの法教育や政治的判断力を育成する政治教育、情報選択能力や情報発信力などを育成するメディアリテラシー教育などを義務教育段階から実践していくことが重要になってくる。私たちは、引き続き様々な教育課題に向き合い、子ども一人ひとりのゆたかな学びを保障する観点から、教育実践を展開していく。

以 上

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