談話
安全保障関連法案の閣議決定に抗議する書記長談話
安全保障関連法案の閣議決定に抗議する書記長談話
2015年5月15日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
政府は、5月14日、「自衛隊法」、「武力攻撃事態法」、「周辺事態法」、「国連平和維持活動協力法」等の10法案を一括して「改正」する「平和安全法制整備法案」と新規立法である自衛隊海外派兵の恒久法の「国際平和支援法案」を閣議決定し、本日、衆議院に提出した。
これらの法案は、昨年7月1日の閣議決定と、4月27日の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の改定にもとづき、世界のどこででも自衛隊が米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能とする「戦争法案」である。恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文及び第9条に違反し、平和国家としての国の在り方を根底から覆すものであり、断じて容認できるものではない。その撤回を強く求める。
閣議決定された法案の内、武力攻撃事態対処法の「改正」では、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる等の要件を満たす事態を「存立危機事態」と称し、自衛隊を地球規模でどこででも米国及び他国軍隊とともに武力の行使を可能にしようとしている。これは、憲法第9条に違反して、歴代内閣が30年以上にわたり「憲法上許されない」としてきた集団的自衛権の行使を容認するものである。
また、従来日本周辺に限定してきた「周辺事態法」の地理的概念を撤廃し、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、後方支援の対象を米軍以外に広げるとともに、弾薬の提供や、発進準備中の戦闘機への給油など自衛隊の活動範囲の制約をなくそうとしている。このままでは他国との武力行使の一体化は避けられず、海外での武力行使への道を開くことになる。
さらに国連平和維持活動(PKO)協力法「改正」では、国連以外が行う平和協力活動への参加も可能とし、従来禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。この武器使用は、正当防衛のみならず、相手の妨害の排除を容認するなど、戦闘行為から武力の行使に発展しかねない。
政府は、以上のような違憲の複数の法案を一括処理して、審議時間の短縮を目論んでいる。閣議決定後に行われた記者会見における「極めて限定的に集団的自衛権を行使できることにした」「戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤り」との安倍首相の発言は、国民を欺こうとする詭弁である。そもそも昨年7月1日の閣議決定は違憲であり、その閣議決定にもとづく安全保障関連法案は、いくら国会審議を重ねても違憲である。
以上のように閣議決定された法案は、平和主義という憲法の基本理念を法律で変更しようとするものであり、立憲主義に反するものである。さらに、憲法改正手続を踏むことなく憲法を実質的「改正」しようとすることは、国民主権の基本原理にも反する。
日本国憲法は、アジア・太平洋戦争における植民地支配と侵略戦争に対する深い反省から、恒久平和の強い願いを込めて制定されたものである。日本教職員組合は、「教え子を再び戦場に送るな」の決意のもと、日本国憲法を蹂躙し続ける安倍政権に断固として対抗していく。さらに集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案など憲法第9条の改悪につながるすべての動きを断固阻止するため、「戦争をさせない1000人委員会」や平和フォーラムと連帯し、すべての組合員の力を結集して全力でたたかう。
以 上