談話

2010年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

2010年08月02日

2010年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

2010年8月2日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、文科省は、2010年度「全国学力・学習状況調査」(4月20日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。

結果公表がこれまでに比べ1ヶ月ほど早くなったこと、都道府県ごとの状況を示す数値が単なる平均正答率ではなく統計上の意味を持たせた数値の幅で表したこと等が、悉皆から抽出方式となったことにより大きく変わった点である。一方、教科に関する調査結果については、「『活用』に関する問題で、記述式問題を中心に課題が見られる」、「『知識』に関する問題においても、各設問を個別に見ると継続的な課題が見られる」等、これまでの調査結果と同様の内容となっており、新たな傾向や課題が明らかになったとはいえない。また、質問紙による学習に関する関心・意欲・態度や基本的生活習慣等の調査結果においても大きな変化は見られない。こうした調査結果は、30%という高い抽出率でなくても、5~10%程度の抽出で十分把握できる内容である。

日本教職員組合の実態調査では、「県・市独自の調査もあり、これまでと同様、子どもたちの負担が大きい」、「希望利用のため採点や集計の負担が増えた」、「希望利用に学校現場の声が反映されていない」等、希望利用方式に対し不満の声が多く出されている。また、多くの自治体が希望したことにより、結果として悉皆調査と同様な状況となっていることをうけ、「序列化・過度の競争」に対する懸念の声が寄せられている。

文科省は、抽出調査となったため市区町村及び学校ごとのデータは集計せず、各教育委員会にも提供しないこととしているが、希望利用の結果を含め各自治体が独自でデータを作成することは可能である。これまでも調査結果は不開示情報としつつも、情報開示請求をうけ開示にふみきる自治体があった。抽出調査となった趣旨をふまえ、「序列化・過度の競争」につながるような結果公表があってはならない。

「学力」とは点数だけに限られるものではない。学ぶ意欲や学びの過程、学びあう人間関係づくりなど、子どもたちが自立し、社会に出て生きる力につながる「ゆたかな学び」が大切である。現在、今後の調査のあり方について、「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」で検討が行われているが、子ども一人ひとりの学力保障に資する教育条件整備につながるよう、調査の目的・方法・内容等を抜本的に見直すことを強く求める。

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