談話
2015年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話
2015年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話
2015年8月25日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
本日、文科省は、2015年度「全国学力・学習状況調査」(4月21日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。
都道府県ごとの状況では、国語、算数・数学について、「引き続き、下位県の成績が全国平均に近づく状況が見られ、学力の底上げが図られている」としている。理科については前回調査(2012年度)と比べ、「下位県の成績に改善傾向が見られる」としている。例年同じように繰り返されるこうした分析のために、毎年悉皆で調査を行う必要性は全くない。
中学校の理科について、3年前に小学校で行った調査と比べて学習意欲の低下傾向が顕著であるとの分析がなされている。
わずかな平均正答率の差をめぐって報道される都道府県のランキングや、説明責任という名目で可能となった市町村別・学校別の結果公表などが子どもたちの学ぶ意欲を失わせ、主体的な学びからの逃避につながっている。
学校現場では順位や得点を上げることに対するプレッシャーはますます強まっており、事前対策に追われ本来の教育課程実施にむけた時間がとれないという深刻な声も聞かれる。今必要なのは、事前対策や詰込み型の学習による点数向上策ではなく、子どもの興味・関心をていねいに引き出し、一人ひとりにきめ細かい指導を行うための条件整備である。そして、学ぶ楽しさを実感できる授業づくりにむけた教材研究や授業準備等の時間の確保である。
大阪府は本年度の学力調査の調査結果を高校入試の評定に活用する方針を打ち出したが、これは明らかな目的外利用であり、断じて許されるものではない。調査本来の趣旨を大きく逸脱するこうした利用は、学校間の序列を生み、過度な競争に拍車をかけることにつながる。これまで再三にわたり指摘してきた悉皆調査の弊害の最たるものである。16年度で調査開始から10年目を迎えようとする今、悉皆調査の廃止やあり方の抜本的な見直しが必要である。
日本教職員組合は、点数や順位に振り回されることなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなど、子どもが主体となる学びが重要であると考える。各自治体には、調査の趣旨をふまえた調査結果の適切な取り扱いとともに、子どものゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。