談話

参議院特別委員会での「安全保障関連法案」強行採決に抗議する書記長談話

2015年09月17日

参議院特別委員会での「安全保障関連法案」強行採決に抗議する書記長談話

 2015年9月17

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

9月17日、参議院の「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」において「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」(平和安全整備一括法案)および「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」(国際平和支援法案)が強行採決された。日本教職員組合は、安倍政権にひたすら追随して国会の数の力のみに頼り強行採決した暴挙に満身の怒りを込めて抗議するとともに、法案の即時廃案を求める。

国会では、重要法案の審議に当たって利害関係者や学識経験者らから幅広く意見を聞くことを目的として中央公聴会と地方公聴会が開催された。特に中央公聴会では、意見表明する「公述人」の公募に、過去10年で最も多い95人が応募し、その全員が法案に反対の立場と言われている。違憲立法に対して如何に多くの市民が危機感を抱いているかの現れである。さらに横浜で開催された地方公聴会では、公述人が「採決のための単なるセレモニーか」と委員長に強く抗議し、慎重審議を求めた。しかし与党は、公聴会を採決に向けた単なる条件整備と位置づけ軽視し、公聴会終了後、わずか数時間で採決を強行しようとした。国民の声を愚弄するものであり言語道断である。

そもそも違憲の安保関連法案は、軍拡競争への道を開き、テロ発生の危険を一層高め、政府の恣意的な判断による海外での武力行使に道を開くものである。

参議院での審議は7月27日から始まった。政府答弁は、衆議院と同様に不明確で不誠実であり、法案の不備や矛盾、立法事実の曖昧さ等が次々と露呈し、その結果、審議の中断は110回を超えた。昨年7月に集団的自衛権の行使容認へと憲法解釈を変更した際、安倍首相が示した3つの事例の根拠すら、野党の追及により覆された。特に9月14日、「存立危機事態」として安倍首相が執拗に言及してきたホルムズ海峡の事例を、「現時点で現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」と発言したことは、衆参190時間超の審議を根本から否定するものである。安倍政権が、如何に極端で非現実的な事例を挙げ、法案の必要性を殊更に誇張し、国民を欺いてきたことが明らかになった。衆議院の審議では不十分だった法案の瑕疵を暴き二院制の重要性を示したにもかかわらず、再び参議院で強行採決を繰り返したことは、良識の府である参議院の矜持を放棄する自滅行為である。

連日、国会周辺をはじめ全国各地で若者・学生をはじめとした多くの市民が法案反対の声を上げている。8月30日には12万人もの市民が国会前に集まり、法案廃案を求めている。世論調査(朝日新聞社、9月12・13日)では、法案について「賛成」29%、「反対」54%、今国会で成立させる必要が「ある」は20%、「ない」は68%、国会での議論は「尽くされた」11%、「尽くされていない」は75%となっている。市民の声は、法案の廃案と明白である。その市民の声を背景にして民主党をはじめとした6会派が、横暴極まる与党の委員会運営に対して、公平で慎重な審議を求め徹底した抵抗を示した。このような状況の中での参議院特別委員会での強行採決は、立憲主義と国民主権への挑戦である。市民の声を顧みることのない安倍政権は、国際緊張を高めて敵がい心を煽り、人を戦争へと駆り立て、立憲主義を破壊して独裁社会への道をつくり出そうとしている。戦後70年培ってきた恒久平和主義と民主主義を根底から覆そうとする安倍政権の退陣を断固求める。

日本教職員組合は、断じて教え子を再び戦場に送らない。「安全保障関連法案」の廃案を最後まで求めるとともに、日本を「戦争ができる国」にさせないため連合・平和フォーラム・戦争をさせない1000人委員会や立憲フォーラムと連携し、広範で強力な運動を展開する。また、政府与党の暴走を止めるべく、民主的なリベラル勢力の総結集による政権交代を求めてとりくみを強化する。

                                                                                          以 上

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