談話
2016年度政府予算案の閣議決定に関する書記長談話
2016年度政府予算案の閣議決定に関する書記長談話
2015年12月24日
日本教職員組合書記長 岡本 泰良
本日、政府は2016年度政府予算案を閣議決定した。
現在日本では、18歳未満の子どもがいる世帯の相対的貧困率が16.3%と悪化し、6人に1人が貧困状態におかれており、家計の格差が教育格差につながってきている。子どもの権利条約・国際人権規約にもとづく、就学前・初等教育から高等教育までの無償化、教育費の私費負担軽減等をはかる必要がある。今回の政府予算案はこれらの視点から言って不十分である。
この間の学習指導要領の改訂により、授業時数や指導内容が増加している。日本語指導などを必要とする子どもたちや障害のある子どもたちへの対応、いじめ・不登校などの課題もある。一方で学校現場から「児童生徒に対して、きめ細かに対応する時間的余裕がない」「教材研究、授業準備の時間が不足している」などの声があげられている。これらの課題解決にむけて、計画的な教職員定数改善や学校の負担軽減策が必要である。財務省は、定数改善の効果についてのエビデンスを強調しているが、「学級規模が小さいほど、授業内容の理解が高まる、学習意欲が高まる」というデータもあり、学力テストの結果など一側面だけで政策効果を判断すべきではない。
日本教職員組合は定数改善を求めて、中央行動の配置とともに、中央地方一体となって政党・国会議員・首長への働きかけ、省庁対策を強化してきた。政府予算案における教職員定数は、統廃合による900人減の数を含め、トータルで純減375人との見方がある。しかし、小中学校の統廃合の決定権限は文科省にはなく設置者の市町村である。予算上の見込みであり、実質的には525人増といえる。いずれにしても、文科省が概算要求において、2024年度までの9ヶ年総数28,100人の教職員定数改善の考え方を公表し、来年度分として3,040人分要求したことが実現しないことから、政府予算案は不十分と言わざるを得ない。また、予算編成過程において財務省は、「教職員定数のベースライン」として、現在の教育環境を継続させながら、教職員定数を約3万7千人減らせるとの主張を行った。これは、机上の計算であり、学校現場の実態を全く反映していない暴論である。政府予算案において、加配定数の機械的な削減を行わなかったことは当然である。
東日本大震災で被災をし、経済的理由により就学等が困難な子どもを対象にした就学支援が行われている。事業対象の子どもの数は全県にわたり、総数で2013年度時点において5万人を超えている。日本教職員組合は、支援が継続されるよう首長に国への働きかけを要請してきた。家計の困窮で修学を断念することはあってはならない。来年度も全額国費で支援する「被災児童生徒就学支援等事業」が継続される予算が盛り込まれた。日本教職員組合のとりくみがその一助となったが、2017年度以降も継続を求めていきたい。
日本教職員組合は、私たちが求める学校現場に立脚した教育施策と教育諸条件の整備を求めて国会対策を強化していく。