談話

日印原子力協定の「原則合意」に関する書記長談話

2015年12月14日

日印原子力協定の「原則合意」に関する書記長談話

 2015年12月14日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

日本・インド両政府は、12月12日、日本からの原発技術供与を可能にする原子力協定の締結で「原則合意」したと発表した。経済成長のみを優先させ、核不拡散条約(NPT)非加盟国であるインドへの原発輸出というNPT体制を空洞化させる愚行に強く抗議する。

インドは、NPT条約の批准を拒否し、1974年、1998年に核実験を行っている。パキスタンや中国との領土問題を抱えているインドは、核兵器を安全保障維持に最低限必要な自衛兵器であると強弁し、核実験の一方的・自発的モラトリアム(一時停止)を宣言しているものの、現在も核弾頭を約100発、プルトニウム540g(核弾頭数135~180発分)を保有し、核弾道の増産と弾道ミサイル迎撃システムの開発にも余念がない。

安倍首相は「平和目的に限定する内容を確保した」としているが、国際原子力機関(IAEA)による核物質等の軍事転用防止を確保するための「保障措置」も、平和利用目的の施設に限定されており、軍事用の再処理施設やウラン濃縮施設を保有しているインドに対しては不完全である。日本の原発技術により核兵器が製造されることも否定できない。

現在、インドは、総電力発電量の約3.5%に過ぎない原発の発電量を2050年には25%にするとし、稼働中原発21基に加え、6基が建設中である。また計画中の原発は22基で、35基が建設検討中である。他国との原子力協定締結により輸入原発建設が計画されているものの、実際に建設が進んだのはロシアの2基のみである。その主な原因の一つとして、原子炉圧力容器や蒸気発生器など80%のシェアを占めている日本製原子力機材が輸入できないことが指摘されている。日印原子力協定が締結されることは、日本製原発機材の輸入により、現在停滞している複数の原発建設が推進されることになる。東電福島第一原発事故を経験し、その事故収束すら見通しが立たず、被災者への支援・保障すら十分ではない日本が、他国の原発建設を推進することは倫理的・人道的にも許しがたい。

日本は唯一の戦争被爆国として、国連総会において核兵器の全面的廃絶に向け、実際的及び実効的措置をとる必要性やNPT非加盟国への加盟を促すことを求める「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動決議」を繰り返し提出している。しかしインドは、NPTに加盟する可能性もほぼ皆無であり、中国とパキスタンが核兵器を全面破棄しない限り、核兵器の放棄も想定できない。このようなインドと原子力協定を締結することは、被爆地・ヒロシマ・ナガサキの思いを踏みにじり、核兵器のない世界を遠ざけるだけであり、断じて容認できない。

日本教職員組合は、「核と人類は共存できない」との立場で、核兵器廃絶・NPT体制の強化にむけて、連合・原水禁と連携してとりくむ。また、原発輸出に断固反対し、再生可能エネルギー政策への転換など脱原発社会実現へ向けたとりくみをより一層強化していく。

以 上

pagetop