談話

2018年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2018年08月01日

本日、文科省は、2018年度「全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)」(4月17日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。昨年度よりすべての公表・提供資料を整数値に変更したものの、依然として順位の変動についてのみ一喜一憂する教委等は、過去問を使った事前対策等を学校現場に押しつけており、過度の競争・序列化に歯止めがかかっていない。学力向上の名目のもと、子どもを追い込むことがあってはならない。

今年度より個別のつまずきを確認する学習診断を行うとして「S-P表」という新たな分析指標が提供された。学校現場において、子どものつまずきは、日々の学習活動の中で把握し、丁寧な指導により対応している。より詳細な結果公表により、子どもがより追い込まれることが危惧される。また、6月に公表された文科省の全国学力調査に関する委託研究結果からも、経済格差が教育格差を生んでいる実態が示され、「教員の追加配置」が「格差の縮小にもつながる」と指摘されている。子どもの学びにしっかりと寄り添う教職員の定数改善こそが重要である。

6月に閣議決定された第3期教育振興基本計画には「毎年度、悉皆での実施」が明記され、英語力に数値目標が示された。中学3年生においては来年度より3年に1度英語の調査が加わる。教委主導で「英検IBA」等のテストをすべての中学校で受験させる自治体も複数出てきており、子どもにさらなる負担が課せられることが懸念される。全国的な学力調査に関する専門家会議の委員からは悉皆調査の見直しや10年を経過した全国学力調査そのものの検証・検討について意見が述べられたにもかかわらず、悉皆調査のメリットのみが強調されている。今、子どもたちにとって必要なのは、点数や順位に振り回されることなく、学ぶ意欲や学び合う人間関係づくりなど、子どもたちが主体となる学びである。そのために文科省がすべきことは、学校現場の多忙化を解消し、教職員が子どもと向き合い十分な教育研究や授業準備ができる教育環境を整えることである。

日教組は、引き続き悉皆廃止を含む調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。

以上

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