談話

OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果公表に関する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2019年12月04日

 昨日、経済協力開発機構(OECD)が2018年に実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果」が公表された。文科省は、今回の調査結果を受け、数学的リテラシーと科学的リテラシーは上位となり、読解力についてはOECD平均より高いグループに位置しているものの、前回2015年調査よりも平均得点及び順位が低下したとしている。また、判断の根拠や理由を明確にしながら自分の考えを述べることなどについて、課題が見られることや、学習活動におけるデジタル機器の利用が他のOECD加盟国と比較して低いことも明らかになったとした。そもそも、表層的なテスト結果の順位のみに左右されて、教育のあり方を議論するのではなく、しっかりとした分析をもとにした教育のあり方を考えることが必要である。
 一方、今回の調査から導入された開放性や他者への敬意・責任といった態度、人間の尊厳や文化的多様性に対する価値観を分析する「グローバル・コンピテンス」調査には、文化的多様性に対する価値観を1つの指標で順位付けされる懸念があるなどとして参加を見送っている。差別解消・人権尊重や多文化共生の調査には参加せず、一部の点数学力の能力調査にのみ参加する政府の姿勢には大きな問題がある。
 
 読解力などを育むには、学習活動における子どもどうしの対話のための時間を確保することや教材研究が欠かせない。新学習指導要領の実施に伴う授業時数の増加、1クラスの児童・生徒数の多さ、教員の多忙な現状、教員志望者の減少、教員不足といった様々な要因が大きくかかわり学校現場は疲弊している。文科省は、「質の高い学校教育が、高い意欲や能力を持った教師の努力に支えられている」としているがそれももはや限界である。様々な課題の抜本的な見直しを行うことなく、授業改善や指導の充実を求めたり、教育機器を充実したりするだけで解決しようとする文科省の考え方では一層子ども・教員を追い込むことになる。また、EIは、今回の公表を受けたコメントの中で、子どもたちが幸福を感じ、自信を持ち、クリエイティブであり、独立した学習者たりうるために、学校改革によってどのように教員を支援できるかという点が明らかになったとしている。まずは、教職員定数の改善・業務削減・給特法の抜本的見直しを含めた学校の働き方改革を強力に推進する中で教材研究・授業準備の時間を確保するとともに、教育課程のあり方を抜本的に見直すことが最重要課題である。

 日教組は、引き続き、子どものゆたかな学びの実現にむけ、学校の働き方改革や教育課程のあり方の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。

                                           以上

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