談話

2022年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

2022年07月29日

日本教職員組合書記長 山木 正博

     7月28日、文科省は、2022年度「全国学力・学習状況調査」(以下、全国学力調査) (4月19日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。文科省は「結果公表の取り扱いについては、機会を通じて各県の担当者や報道機関に適切な対応をお願いしている」としているが、子どもの様々な実態を抜きにした点数学力や順位の変動が特に地方新聞等で大きく扱われることにより、競争・序列化に拍車がかかることが懸念される。

    また、文科省は事前対策について16年4月に「調査実施前に授業時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させることは、本調査の趣旨・目的を損なうものと考える」という通知を発出したものの、日教組実態調査からは、教育課程を変更し事前対策が授業時間を使って行われていることも報告されている。学校現場では、新型コロナウィルス感染症対策や、GIGAスクール構想にもとづくICTの活用に加え、全国学力調査による「学力向上」対策、調査後の自校採点、教委への報告など、教職員への負担は増している。

 

 教職員は子どもたちの学ぶ意欲を高め、子どもどうしが学びあう楽しさを実感できるよう日々努力している。全国学力調査が悉皆で行われ、結果公表されることで学校現場に競争的環境をもたらし、子どもたちにストレスを与えていることは、今までの日教組調査からも明らかである。今求められるのは、学校の安心・安全を確保し、教職員が十分な教材研究や授業準備のもと、子どもたちが主体的に学ぶことができる教育環境を整えることである。

 

    現在、文科省は全国学力調査のCBT化をすすめており、「全国的な学力調査のCBT化WG 最終まとめ」(21年7月)の中では、24年度から児童生徒質問紙調査についてはオンラインによる回答方式を全面導入することや、全国学力調査についても順次CBT化を導入すること、現在の全国同日一斉実施を見直し、一定期間内(複数日に分散)で実施することへの見直し等が記載されている。CBT化について日教組は、ビックデータなど個人情報保護の観点や、技術面から教職員へのサポート、ネットワーク環境の整備等の課題について引き続き文科省協議を行う。

 

    「ゆたかな学び」とは、点数や順位に振り回されることなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなど、子どもが主体となる学びである。日教組は、今後も悉皆調査廃止を含む調査方法等の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。

以上

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