談話
第3期教育振興基本計画の閣議決定にかかわる書記長談話
第3期教育基本振興計画(以下、基本計画)が、6月15日、閣議決定された。少子高齢化、グローバル化などによる社会の変化などが「加速」するとし、「人生100年時代」を見据え、幼児から高齢者まで生涯にわたって必要な知識・技能を身につけ、社会的変化を乗り越えるとともに可能性を最大限に伸長できる教育の実現を求めている。
測定指標として、英語力に数値目標が示され、PISA調査に関しても参考指標で上位層と下位層の割合を示すことが求められている。数値目標の達成にむけ、教育委員会主導で「英検IBA」等のテストをすべての中学校で受験させる自治体も複数出てきており、子どもにさらなる負担が強いられることが懸念される。また、全国学力・学習状況調査についても、「毎年度、悉皆での実施」が明記された。悉皆調査であることが学校間・自治体間の競争を助長している。学校の過度に競争的な雰囲気がいじめや不登校などを引き起こしているという国連子どもの権利委員会の勧告を否定する政府の姿勢が強く出ていると思わざるを得ない。数値の達成が自己目的化されたり、一時の数値的データ・調査結果のみで教育が判断されたりすることはあってはならない。
「献身的教師像を前提とした学校の組織体制では質の高い学校教育を持続発展させることは困難」としつつも、現場の「業務の役割分担・適正化」等の創意工夫などで改善することを求め、業務の具体的な削減内容や総勤務時間短縮の数値目標等は示されていない。教職員が一人ひとりの子どもと向き合うことのできる時間を確保するには、少人数学級推進、持ち授業時間数削減を含めた教職員定数改善等の条件整備や業務削減などの働き方改革とそれを推進するための教育予算拡充が欠かせない。
障害のある子ども、外国につながる子ども、差別や抑圧、貧困や様々な家庭の背景の中で苦しむ子どもなどの学習権の保障が大きな課題となっている。「学びのセーフティネットを構築する」とし、個人の性的指向や性自認の多様性に適切に配慮することが盛り込まれるなどしている。一方で、障害のある子どもなどの「就学前の早期発見」による「適切な支援」の推進が求められているが、それは子どもがともに学ぶことを阻害する結果につながっている現実がある。ともに学ぶインクルーシブな学校づくりと子どもを中心に据えた教育実践が求められている。また、就学援助制度の充実や給付型奨学金の拡充など、経済格差が教育格差につながらないようにすることが重要である。未来への投資としての教育へ十分な予算を確保し投資していくことが、「変化の激しい社会」の中で最も求められている。
日教組は、引き続き、教育関係者にとどまらず、保護者・地域住民など幅広い社会的対話をすすめ合意形成をはかる中で、子どもたちのゆたかな学びを保障するための35人以下学級の推進、高校授業料や幼児教育・高等教育の無償化、給付型奨学金・就学援助制度の拡充などの教育諸政策が実現されるようとりくんでいく。
以上