談話

「福島原発集団訴訟仙台高裁判決」に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2020年10月06日

 9月30日、仙台高裁(上田哲裁判長)は、東電福島第一原発事故によって被災した福島県と隣県の住民約3600人が国および東電に対して損害賠償を求めた訴訟で、国と東電の責任は同等とし、損害賠償を命じる判決を下した。原告3550人に対し、総計で約10億円の賠償を命じるもので、一審の約2900人、総計5億円を大きく上回り、より救済範囲を広げたものとなっている。

 判決では、政府の地震調査研究推進本部が2002年に出した「長期評価」では、福島県沖においても巨大な津波地震が起きる可能性を指摘しており、速やかに予想到達水位を試算していれば、国と東電は遅くとも同年末ごろには10メートルを超える津波を予見できたとしている。さらに、防潮堤設置などの対策をとっても事故は防げなかったとする国側の主張も退け、「規制当局に期待される役割を果たさなかった」と厳しく批判し、国の規制権限の不行使は違法と結論づけた。

 これまで東電と国を被告とする同種の一審判決は、13件あり、そのうち6件の判決では「長期評価」による津波発生は予見できても、実際の津波はさらに大きく事故は避けられなかったとして国の責任が否定されてきた。今回の高裁判決は、今後の国の責任論に大きな影響を与えることとなる。また、一審の地裁判決では、国の賠償額が東電の半額にとどまっていたが、高裁は責任を同等とした。政府の原子力賠償紛争審査会が定めた中間指針にもとづく東電の賠償基準では今回の賠償額は足りず、これを上回る救済が必要であるという判決でもあり、国の責任を前提としない賠償基準は見直すべきである。
 原発事故から9年7か月が経過したが、福島県から県外へ約2万9千人(9月29日現在復興庁)もの避難者がいる状況である。国と電力会社は、司法の判断を厳粛に受け止め、上告をせず、早期の決着をはからなければならない。また、福島原発事故の現状を直視し、原発の再稼働を断念し、脱原発を追及するべきである。

日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現とすべての原発の再稼働阻止をめざし、今後とも原水禁・平和フォーラムとともにとりくみを強化していく。

                                    以上

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