談話

2021年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2021年08月31日

本日、文科省は、2021年度「全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)」(5月27日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。文科省は「結果公表の取り扱いについては、様々な機会を通じて各県の担当者や報道機関に適切な対応をお願いしている」としているが、子どもの様々な実態を抜きにした点数学力の上昇や順位の変動が新聞等で大きく扱われることにより、競争・序列化に拍車がかかることが懸念される。

 文科省は全国学力調査の目的を「学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」としているものの、教委や管理職は学力調査の「目標値」を設定し、それにむけたとりくみを学校現場に強いている実態がある。20年度は、新型コロナウィルス感染症拡大により全国学力調査は中止となったものの、日教組が行った問題冊子等の取り扱いの調査では、新型コロナウィルス感染症拡大への対応に加えて、例年同様、採点・評価・指導・返却を求められたことが報告されており、行き過ぎた事前対策や自校採点等、子どもや学校現場への負担は従前より課題となっている。

 新型コロナウィルス感染症対策を行いつつ、教職員は子どもたちの学ぶ意欲を高め、子どもどうしが学びあう楽しさを実感できるよう努力している。全国学力調査が悉皆で行われ、結果公表されることで学校現場に競争的環境をもたらし、子どもたちにストレスを与えていることは今までの日教組調査からも明らかであり、調査の抜本的見直しが必要である。今求められるのは、学校の安心・安全を確保し、教職員が十分な教材研究や授業準備のもと、子どもたちが主体的に学ぶことができる教育環境を整えることである。

現在、文科省は全国学力・学習状況調査のCBT化をすすめており、「全国的な学力調査のCBT化WG」では7月に「最終まとめ」を報告した。その中には、21年度以降、試行・検証を行い、段階的に規模・内容を拡充し、25年度から順次CBT化を導入することや、現在の全国同日一斉実施を見直し、一定期間内(複数日に分散)で実施することへの見直し等が記載されている。CBT化については、ビックデータなど個人情報保護の観点や、技術面から教職員へのサポート、ネットワーク環境の整備等の課題があり引き続き文科省協議を行う。

日教組は、今後も悉皆調査廃止を含む調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しと必要な条件整備を求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。
以上

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