談話

特別支援学校高等部学習指導要領の告示に対する書記長談話

日本教職員組合 書記長 清水秀行
2019年02月07日

文部科学省は2月4日、特別支援学校高等部学習指導要領を告示した。新学習指導要領は、2022年度から学年進行で実施される。

今回の改訂は、国連障害者権利条約の批准(2014年)にともなう、障害者差別解消法の施行(2016年)等様々な法律の改正後初めてとなる。「医学モデル」から、障壁を社会で軽減する「社会モデル」へと障害観を転換しなければならないにもかかわらず、依然として「障害による学習上・生活上の困難を『改善・克服』」が教育目標にあげられ、個人の努力に力点が置かれていることは、障害者権利条約の理念に逆行するものである。

2018年3月に告示された高等学校学習指導要領と同様に、今回改訂の特別支援学校高等部学習指導要領においても「資質・能力」が前面に押し出されている。生徒たちを目標達成にむけて追い立てることにならないか危惧される。インクルーシブでゆたかな学びを創造するためには、育成すべき「資質・能力」の前に、一人ひとりの子どもが肯定され、その尊厳を尊重される教育の構築が急務である。
 
「個別の教育支援計画等を活用して関係機関等との連携を図る」とされたが、作成に際して保護者のみならず生徒本人の確認を得ることや、進路先に引き継ぐ際には、個人情報保護の観点からも本人・保護者の了解を得ることが必要である。また、個別指導の重視が強調されているが、子どもどうしや多くの人とのかかわりの中で共に学ぶことの重要性を忘れてはならない。
  
日教組は、学習指導要領の実施にあたっては、子ども・地域の実態に即したカリキュラムづくりが可能となる教育施策・条件整備を求めるとともに、教育現場でのさらなる弾力的運用等が可能となるようとりくみをすすめていく。また、子どもたちに「ゆたかな学び」を保障していくとともに、誰も排除しない、誰もが共に学べるインクルーシブな学校づくりにむけてとりくんでいく。

以上

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