談話

大阪市教組分会会議学校施設使用不許可訴訟の大阪高裁判決に対する書記長談話

日本教職員組合 書記長 清水 秀行
2019年01月25日

昨日、大阪高等裁判所(田中敦裁判長)は、日教組事件「大阪市教組分会会議学校施設使用不許可訴訟」について判決を言い渡した。

この訴訟は、大阪市教組の各学校の分会が、勤務時間外に分会会議を開くため、学校施設の使用許可を求めたところ、大阪市労使関係に関する条例(以下、「本件条例」という。)12条で「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は行わないものとする。」と定められたことを根拠に学校長が使用不許可としたことの違法等を主張して大阪市教組が提訴し、第一審判決で違法性が認められなかったため、大阪市教組が控訴したものである。本判決は、①代替施設等を確保し、分会会議を行うことそれ自体が不可能であるとまでいえないこと等から、学校施設が使用できないことで組合活動が阻害されると評価することはできないこと、②本件条例が市会において可決されて成立したという状況下において、学校施設を分会会議に使用させることは、市民に対し、公立学校教育の政治的公平中立性に疑念を抱かせる恐れもあるから、従前の取扱いを変更して不許可とすることが不合理とまではいえないこと等を理由に、学校長の裁量権の逸脱及び濫用を認めず違法でないと判断した。

しかし、本判決の判断は、学校現場の実情を全く理解しておらず、また、本件条例12条の存在を過度に重視し、他方で、長年にわたって分会会議のための使用により特段の不都合が生じたことはなかった点を軽視するものであり、極めて不当である。

本判決は、分会会議を労働組合としての中心的な活動であるとし、分会会議を行うために学校施設を使用することの必要性が組合にとって大きなものであると認めながら、分会会議を学校施設で行うことは構成員の利便にすぎないと切り捨て、当該学校の構成員の使用を不当にも排除した。しかしながら、会議の場所の設定にあたり利便性を考えることは当然であり、民間会社を含め労働組合の構成員が勤務する職場で分会会議を行うことは自然なことである。加えて、教職員の長時間労働が社会問題となっている中、多忙のため、分会会議を分会の構成員の勤務先である学校施設以外で行うことは時間的にも困難であるという学校現場の実情や、本判決も認めているとおり、分会によっては学校施設の近傍に代替施設等を確保することが必ずしも容易であるとはいえないこともあること等からすると、学校施設で分会会議を行えないと組合活動が阻害されることは明らかであり、本判決は事実誤認甚だしく、断じて容認できない。

さらに、本判決は、本件条例が市会において成立したという状況下において、学校施設を分会会議に使用させることは、市民に対し、公立学校教育の政治的公平中立性に疑念を抱かせる恐れもあると判示するが、この判示は、政治的公平中立性を曲解し、現実的には考え難い疑念を抱かせる恐れという点を極端に強調するものであり、看過できない。

また、本判決は、本件条例について、労働組合等に対する敵対的意思に基づいて制定されたとみることはできないと判示するが、制定に至る過程からすれば労働組合を敵視し組合活動を不当に制限する趣旨で制定されたものであることは明らかであり、憲法28条の保障に反する内容を含むことから、直ちに廃止されるべきである。

日教組運動は、分会、支部、単位組合の運動の段階的な積み上げの上に成り立っており、分会会議こそが運動の原動力となっている。日教組は、本判決及び本件条例の不当性について、広くあらゆる場面で訴えていく。また、教職員の勤務・労働条件を改善するために、引き続き、全国の組合員の分会会議での情報交換や討議を基盤にして、保護者や地域住民、すべての教育関係者と社会的会話をしながら、様々な課題に真摯にとりくんでいく。

                                     以上

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