談話

「伊方原発3号機運転差し止め訴訟の広島高裁判決」に対する書記長談話

日本教職員組合 書記長 清水 秀行
2020年01月21日

1月17日、広島高裁(森一岳裁判長)は、山口県内の住民が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めの仮処分を求めた即時抗告審で、19年3月の山口地裁の決定を覆し、運転差し止めの仮処分決定を下した。これを受けて、伊方原発3号機は、現在行っている定期検査が終了する今年3月末以降も運転ができない状態が続く見通しとなった。伊方原発をめぐっては、17年12月にも広島高裁が運転差し止めを命じる仮処分の決定を下している。仮処分はのちに覆されたが、再び出された差し止め決定は重く受け止められなければならない。今回の決定は、原発の安全性を最大限に求める住民の主張を具体的に検討しており、今後の司法判断にも大きな影響を与えるものとして評価する。

裁判長は決定で、四国電力が調査不十分なまま行った原子炉設置許可などの申請を、原子力規制委員会が問題ないと判断したことに対し、原発近くに活断層がある可能性は否定できないとして、その判断には「過誤や欠落があったと言わざるを得ない」と厳しく批判した。
また、阿蘇山の「破局的噴火」について、17年の高裁判決では火砕流の影響を受ける可能性があるとしたのに対し、今回の決定では火砕流が原発に到達する可能性を否定できないことを理由に、立地不適とするのは社会通念に反するとした。一方、火山灰などの噴出量は四国電力が想定した量の約3~5倍を想定すべきだと指摘し、これを認めた原子力規制委員会の判断も不合理であるとした。

四国電力は、今回の決定に対し「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない」として、取り消しを求めてすみやかに異議を申し立てる考えを示した。政府はエネルギー基本計画で2030年代の原発による電力比率を20~22%とし、原発再稼働の方針を変えていない。原発運転を差し止めるとした司法判断は、福島原発事故以降5回目、伊方原発では2度目となる。安全対策の拡充により発電コストにおける原発の優位性は後退し、核燃料サイクル計画も事実上破綻している。政府と電力会社は、「原発の運用によって、住民は生命、身体に重大な被害を受ける具体的危険性があるから差し止めの必要性がある」とした今回の司法判断を真摯に受け止めるとともに、福島原発事故の現状を直視し、すべての原発の再稼働を断念し、脱原発を追求すべきである。
日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現とすべての原発の再稼働阻止をめざし、今後とも原水禁・平和フォーラムとともにとりくみを強化していく。

以 上

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