談話

広島朝鮮学校「無償化」裁判の最高裁上告棄却に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2021年08月02日

7月27日、国が朝鮮学校を高校無償化の対象に指定しなかったことは違法として、学校法人「広島朝鮮学園」と広島朝鮮初中高級学校の元生徒109人が処分取り消しなどを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は学校側の上告を棄却し、国の処分を適法とした高裁判決が確定した。13年に愛知、大阪から始まり、東京、広島、九州で行われてきた「高校無償化裁判」では、朝鮮学校及び元生徒らが国に対して処分の取り消しと指定の義務付け、国家賠償などを求めきたが、司法は、原告側の請求をすべて却下し、国側の主張を追認する極めて不当な結果となった。
 2010年に施行された「高校無償化法」は、すべての子どもに対して経済力に関係なく後期中等教育をうける権利を保障することを目的としていた。そのため政府は、法の施行をうけ国際人権A規約「中等教育の漸進的無償化」条項(13条2のb)の留保を撤回するに至った。しかし、政権交代後の自民党政権は、13年、朝鮮学校と在日朝鮮人総聯合会との関係を口実に、省令規定を一部削除して朝鮮学校を高校無償化の適用から排除した。朝鮮学校を支援金の対象から除外することは、無償化法の目的から明らかに逸脱している。国際人権規約や憲法に違反しているかどうかの審議もせず、国に追随しすべての上告を棄却した最高裁は、自らの責務を放棄していると言わざるを得ない。
 第2次安倍政権以降、自民党政権は、朝鮮学校を高校無償化の適用から排除しただけでなく、朝鮮大学校生についても学生支援緊急給付金制度から除外するなど、子どもたちの教育を受ける権利を奪い続けている。さらに朝鮮学校の子どもたちが民族教育を受ける権利を侵害することは民族差別でもあり、国は在日朝鮮人の基本的人権を尊重しているとは言えない。
一連の裁判は終結したが、国による在日朝鮮人への差別は残ったままである。国連の子どもの権利委員会、人種差別撤廃委員会、社会権規約委員会から適用基準の見直しを求める勧告が再三出されており、引き続き国に是正を求めていかなければならない。
日教組は、さまざまな国籍や民族の人々が、共に地域社会で市民として暮らし、それぞれの権利が尊重される多文化共生社会をめざしていく。とりわけ朝鮮学校の子どもたちをはじめとしたすべての子どもの教育をうける権利の保障にむけ、引き続き平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。
以上

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