談話

「黒い雨」訴訟の広島高裁判決に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2021年07月22日

7月14日、広島高裁(西井和徒裁判長)は、原爆投下直後に降った放射性物質を含む、いわゆる「黒い雨」によって被爆した原告らが被爆者健康手帳等の交付を求めた訴訟(「黒い雨」訴訟)で、広島県や広島市、国の控訴を棄却し、原告全員を被爆者と認定した一審を支持する判決を下した。

 判決は、黒い雨が混入した井戸水の飲用等による内部被爆の可能性についても当然の前提とし、被爆者援護法第1条3号「原子力爆弾の影響を受けるような事情の下にあった者」について「放射能による健康被害が否定できないことを証明すれば足りる」とした。黒い雨が降った地域を限定するとともに、健康被害が放射線の影響であるという科学的知見にこだわってきた国の姿勢を断罪し、被爆者に寄り添った画期的な判決である。

長崎においては、17年の「被爆体験者訴訟」で、指定地域外にいた人たちについて「放射能の影響を受けるような事情にあった者には当たらない」とした二審が確定し、原告は長崎地裁に再提訴している。広島同様、国の指定した旧長崎市域以外でも放射能による健康被害は否定できず、指定地域を拡大すべきである。被爆二世についてはこの間、厚労省要請、国家賠償請求裁判等にとりくみ、現在は被爆者手帳に代わる「記録簿」が発行され、「被爆二世健康診断」が行われている。放射能が遺伝子に与える影響が想定され、健康被害の不安に苛まれており、被爆二世についても早急に被爆者援護法の対象とする必要がある。

広島の裁判ではすでに原告84人の内14人が亡くなっており、一日も早い解決が望まれる。国はこれまでの姿勢を改め、健康被害に対する不安を一掃するため被爆の可能性があるすべての人たちの救済にむけ、上告を断念すべきである。

日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、原水禁ともに運動をすすめてきた。今後も被爆者の思いを受け止めるとともに、「非人道的兵器である核兵器の廃絶」という人類共通の目標実現のため、国際社会の一致した行動を求めて幅広い世論喚起等に継続的にとりくんでいく。
以上

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