談話

放射能汚染水の「海洋放出」方針決定に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2021年04月13日

 4月13日、菅政権は、関係閣僚会議をひらき、「現実的な判断とした」として、東電福島第一原発の汚染水を浄化した処理水を海洋放出する方針を固めた。
 国は、海洋放出について多核種除去設備(ALPS)により汚染水を浄化してトリチウムを含んだ処理水のみとしていたが、18年にはトリチウム以外の放射性物質が基準値を超えて残存していることが明らかになっている。東電はこれを再浄化し、希釈してトリチウムの含有量も基準値以下にして放出するとしているが、弱毒性のトリチウムといえども大量にしかも長期間にわたり放出し続けたときの危険を指摘する専門家もいる。放射性物質の環境への蓄積や濃縮されることによる生態系への影響から、海洋放出は到底容認できない。さらにこの決定は、福島の漁業に対する風評被害を招くとともに、現地は実害の恐れさえも抱き続けることとなる。これは福島で生活する人々、海を生業とする人々、そして、将来の世代への人権侵害である。また、中国、韓国、台湾は早々に海洋放出を批判し、反対の態度を示した。陸上保管が可能であるにもかかわらず、海洋放出することは、海洋汚染の防止を謳うロンドン条約の理念と目的に違反し、将来的には環境破壊や海洋汚染につながりかねず、国際社会の理解を得られるものではない。国は、新たな保管場所の確保等海洋放出以外の様々な方法を十分検討し、海洋放出を撤回すべきである。
 4月7日の菅首相との会談で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は「絶対反対との考えはいささかも変わらない」とし、地元・福島県漁連の野崎哲会長も「『海洋放出』に反対の姿勢は変わらない」としていた。福島県民の多くも反対の声をあげている。また、福島県内59市町村のうち約7割にあたる41市町村議会が、「海洋放出」に反対または慎重な対応を求める決議や国への意見書を採択している。さらにこれまで経済産業省は「関係者の方の理解を得ることなくしていかなる処分もとることは考えていない」と地元の理解が前提としてきており、福島県民、漁業関係者のみならずすべての人々との約束も反故にするものであり断固抗議する。
日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現をめざし、今後とも原水禁とともにとりくみを強化していく。

以上

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