談話

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞に関する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2017年12月11日

 12月10日、2017年のノーベル平和賞が核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与された。「核兵器の使用が人道上破壊的な結果をもたらすことへの注目を集め、核兵器を条約によって禁止するための革新的な努力をしてきたこと」が受賞理由として挙げられた。今年7月の国連における核兵器禁止条約の成立に貢献してきたICANの活動の原点には、被爆者が訴えてきた「核の非人道性」がある。この受賞は、核兵器廃絶をめざして絶え間なく努力してきた世界の草の根の運動が結実したものであり、広島と長崎を生き延びた被爆者、世界中の核の被害者に対して贈られたものだといっても過言ではない。

 ICANは2007年にオーストラリアで結成され、日本やアメリカ、イギリスなど各国のNGOが加わり、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)や各国の平和団体と連携し、核兵器廃絶をめざして政府代表への働きかけやキャンペーンをすすめてきた。2013年からノルウェーやメキシコなどで3回にわたって各国の政府代表が参加して開かれた「核兵器の非人道性を検証する国際会議」では、証言活動を続けてきた被爆者と協力しながら、核兵器が壊滅的な被害をもたらす非人道的な兵器であるという認識を国際社会に広めるために貢献した。

 「ビリョクだけどムリョクじゃない」をモットーに、20年間にわたり約200人の高校生平和大使が「核兵器の廃絶と平和な世界の実現」を訴え続けている。広島・長崎の悲惨な経験を伝え、「核兵器の非人道性」を世界に訴える活動は、大きな影響力を及ぼしている。「戦争も核兵器もない『平和な世界の実現』を求める署名」は、高校生平和大使により毎年国連欧州本部に届けられ、これまでに160万筆を超えている。世界の若い世代が核兵器廃絶に関心を持ち、平和な未来を創造する原動力となる活動である。

 日本政府は米国の核の傘に守られている安全保障上の立場から核兵器禁止条約に反対し、現在も交渉に参加する意思を示していない。核抑止力に頼るということは自らも核兵器の標的になるということであり、核兵器は決して国家に安全を与えない。今回のノーベル平和賞受賞を契機に、政府には条約を批准し、「唯一の戦争被爆国」として核兵器廃絶にむけて先頭に立ってけん引することを強く求める。 

 日教組は「核と人類は共存できない」として、原水禁・平和フォーラムとともに運動をすすめてきた。今後も、被爆者の声に耳を傾け、思いを受け止めるとともに、「非人道的兵器である核兵器の廃絶」という人類共通の目標実現のため、国際社会の一致した行動を求めて幅広い世論喚起等に継続的にとりくんでいく。

                                      以上

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