談話

「伊方原発3号機差し止め訴訟の広島高裁判決」に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2017年12月15日

広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、広島県内の市民が四国電力(四電)伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めの仮処分を求めた抗告審で、広島地裁の決定を覆し来年9月30日まで運転を禁じる決定を下した。3号機は活断層の存在や避難計画の問題など、多くの県民、地元住民の反対と不安の声を無視して昨年8月に再稼働を強行したことを顧みれば、広島高裁の決定は当然である。また、原発の運転を差し止めた高裁における司法判断は初めてで、各地ですすめられている裁判にも大きな影響を与えるものとして評価する。

裁判長は決定で、原子力規制委員会が作成した安全審査の内規「火山ガイド」が、火山の噴火規模が推定できない場合、過去最大の噴火を想定して評価すると定めていることを指摘した。その上で、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山について「四電の地質調査やシュミレーションでは、過去最大の約9万年前の噴火で火砕流が原発敷地の場所に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」などと述べた。さらに阿蘇山の噴火に伴う噴石や火山灰などの降下物についても、「住民らの生命身体に具体的危険が推定される」とし、原発の立地に不適であるとした。
しかし、火山災害以外の地震対策などは、新規制基準の内容や規制委員会の判断、四電が設定した基準地震動などを「合理的」として容認したことは問題である。特に伊方原発では、地震動に対する安全性について東電福島第一原発事故の教訓を生かしておらず、再び深刻な事態が生じかねない。
さらに、9月30日までの期限は、広島地裁で運転差し止めの訴訟も続いていることをふまえ、その本訴での証拠調べをするためとして設定されたもので、本来この決定で指摘された火山事象に対する潜在的な危険性と期限とは関係ないものである。9月30日までに本訴が終わっていなければ、四電は期限経過後に再稼働する可能性があり問題を残している。

国とすべての電力会社は、司法の判断を厳粛に受け止めるとともに、福島原発事故の現状を直視し、すべての原発の再稼働を断念すべきである。
日教組は、「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現をめざし、今後とも原水禁・平和フォーラムとともにとりくみを強化していく。

以 上

pagetop