談話

「海賊対策法」の成立に抗議する書記長談話

2009年06月23日

「海賊対策法」の成立に抗議する書記長談話

2009年6月19日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

6月18日、参議院外交防衛委員会において「海賊対策法案」が賛成少数で否決された。本日、午前中の参議院本会議においても、同法案は賛成少数で否決された。しかし、与党は、午後の衆議院本会議に「海賊対策法案」の再議決の動議を提出し、野党の強い反対にもかかわらず、再可決して強行に法案を成立させた。参議院の意志を踏みにじり、再議決の乱用・数の力による暴挙が繰り返されていることに強く抗議する。

日本の貿易における海上貿易の割合は約99%(トン数ベース)とされており、貿易のほとんどを海上輸送に依存している。このため、海上交通路の安全確保としての対策は必要であるが、海賊対策は「海洋法に関する国際連合条約」の趣旨に則り、すべての国の間での平和・安全・協力及び友好関係の強化に貢献するとともに、世界中の人々の経済的・社会的発展を促進することに資するものでなくてはならない。

しかし、「海賊対策法」では「海賊対策は第一義的には海上保安庁の役割」としながら、まるで「武力で海賊行為を抑え込む」かのように、政府は法案提出前から海上自衛隊を派遣し、5月にはC130輸送機・P3C哨戒機を派遣するとともに自衛隊員の増員を行い、今では戦後初めて陸海空三自衛隊部隊が海外に常駐するという大規模な派兵になっている。また、法案に「武器使用基準の緩和」を盛り込むとともに、「自衛隊派遣ありき」の議論に終始したことは極めて問題である。武力行使や威嚇は、海賊行為の根本的な解決、平和や友好関係の強化にはつながらない。

日本教職員組合はこれまで、「自衛隊の海外派遣」「武器使用基準の緩和」等は憲法9条に関わる重大な問題であることを指摘するとともに、自衛隊に対するシビリアンコントロールの徹底を訴えてきたが、「海賊対策法」にもとづく自衛隊の活動が国会の承認を必要としないことは断じて容認できない。さらにこの法律が「特措法」ではなく「恒久法」であり、半永久的に自衛隊の海外派兵が可能となったことは深刻な事態であり、断固抗議する。

現在派遣されている自衛隊の即時撤退と「海賊対策は海上保安庁の役割」であることを徹底し、自衛隊を海外に派兵しないことを強く求めるとともに、今後、シビリアンコントロールを十分に機能させることができる政府の樹立をめざして全力でとりくみをすすめる。

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