談話
朝鮮学校への就学支援金支給に関する規程の決定をうけての書記長談話
朝鮮学校への就学支援金支給に関する規程の決定をうけての書記長談話
2010年11月8日
日本教職員組合書記長 岡本 泰良
髙木文部科学大臣は11月5日、3月に成立した「高校無償化法」(公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律)に基づく高等学校等就学支援金制度(私立高校対象)の対象に、いわゆる朝鮮学校の生徒を含めるかどうかを判定する「基準」について、「外国人学校の指定に関する規程」を決定し、発表した。今後、これをもとに朝鮮学校の申請を国が審査し、年内に指定の決定・告示をすることになるが、支給に向けて大きく舵が切られたといえる。
この間、各種学校である朝鮮学校を無償化の対象とするかについては、川端前大臣が「外交上の配慮や教育の中身が判断材料になるのではない」と述べ、「あくまで高等学校の教育課程に類するもの」であるかどうかで判断するとして、客観的な判断基準作りと審査態勢を検討するため、教育専門家による検討会を発足させた。8月に出された検討会の結論は無償化の対象となっている専修学校の基準を目安として個々の朝鮮学校の適否を判断するというもので、朝鮮学校はいずれも専修学校の基準を満たす可能性が高く、いわゆる無償化の対象となるものであった。しかし、その後国会審議等で教育内容や経理にかかわる問題が取りざたされ、最終的に民主党内の部門会議での議論を受け、文科大臣の判断基準が示されたものである。
その内容は、基本的に国際人権A規約にそって定められ、教育内容は問わないとしたことは評価される。しかし、今回の規程には8月段階に加えて、確実に授業料に充当されているか毎年度、資料の提出が義務付けられた。また大臣談話では、具体的な教育内容について懸念される実態がある場合には、自主的改善を強く促すとするなど、私学としての建学の精神や民族教育の独自性を尊重する観点から課題が残る。
もともと高等学校等就学支援金は、大臣談話にもあるように生徒個々人に対する支給であり、あくまで学校は代理受給するもので、本来どこで学ぶかによって支給の可否が問われるべきものではない。厳しい家計の子どもも多いといわれるなか、適用が留保され、10校、1,800人の朝鮮学校の生徒たちが支給を9ヶ月も待たされることは、制度の趣旨から外れたものといえる。
日本教職員組合は今回の規程決定をうけ、朝鮮学校に学ぶすべての生徒たちにもれなく就学支援金が支給されることを強く望むものである。今後も給付型奨学金の創設、公私間格差の是正、私費負担の軽減、さらには定員内不合格の問題などすべての子どもに後期中等教育を保障するための課題解決にとりくむとともに、高校実質無償化のさらなる深化につとめていく。