談話
高校授業料無償化「改正」法案の閣議決定に対する書記長談話
高校授業料無償化「改正」法案の閣議決定に対する書記長談話
2013年10月18日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
10月18日、政府は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」の「改正」案を閣議決定した。
2010年にスタートした高校授業料無償制度は、家庭の経済状況にかかわらず、国が「すべての希望する子どもに後期中等教育を保障する」という理念の具現化であった。進学率が98%に達した今、高等学校は国民的な教育機関であるといってよい。そうした現実をふまえ、高校教育が「受益者負担」から「公的負担」に転換したことは意義深い。さらに、政府は、2012年9月国際人権A規約の「中等教育・高等教育の漸進的無償化条項」に対する留保を撤回した。OECD加盟34ヵ国中31ヵ国で高校教育は無償であり、先進国では常識となっている。日本は国際社会で、高校はもちろん、高等教育に関しても、徐々に無償化していくことを宣言したことになる。
今回の「改正」法案は、高校授業料無償制度に所得制限を導入するとともに、公立学校の授業料不徴収制度を私立学校と一本化し、新たな就学支援金制度にするというものである。これは、高校教育を国が保障する制度から家庭の責任に返すものであり、国際人権A規約の重大な違反である。決して容認できるものではない。
今臨時国会で法案が可決されれば、2014年4月より一世帯あたりの保護者の収入の合計が910万円以上の家庭から高校の授業料を徴収することとなる。高校生の1/4が対象になることが想定される。就学支援金の支給を求める世帯は、届出制で世帯収入や家族状況を明らかにしなければならない。多くの生徒・保護者に申請手続きの負担が生じることになるが、場合によっては精神的な苦痛にもつながりかねない。本来就学支援金の支給の対象となる生徒が届け出ることができず、授業料を徴収されることも想定される。新制度の対象となる現中学3年生は、すでに進路選択の時期である。制度の詳細が明らかでないことから、今後、保護者・生徒・学校現場の大きな混乱が予想される。また、日本教職員組合をはじめ、全国知事会等多くの団体は所得制限導入に関して懸念を表明している。十分な国民的議論を経ないまま行われた今回の閣議決定はまさに拙速としか言いようがない。
日本教職員組合はこの間、連合や各教育関連団体と連携し、高校授業料無償制度への所得制限導入に反対するとりくみをすすめてきた。今後、「改正」法案は国会での議論の俎上に載る。多数与党による議論なき成立を断固阻止しなければならない。生徒・保護者・現場の声を反映した制度を追求することが必要であり、そのためにも、これまで以上に広く社会的対話を通じ、市民に発信していくとりくみが求められる。
日本教職員組合は、子どもの最善利益のために、引き続きすべての希望する子どもに高校教育を保障するとりくみをすすめていく。