談話

高校授業料無償化「改正」法案成立に対する書記長談話

2013年11月27日

高校授業料無償化「改正」法案成立に対する書記長談話

2013年11月27日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

11月27日、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」の「改正」案が参議院本会議で可決され、成立した。日本教職員組合はこの間、連合や各教育関連団体と連携し、高校授業料無償制度への所得制限導入に反対し、新たな財源で給付型奨学金の創設を求めるとりくみをすすめてきた。78万筆以上の個人署名と6600以上の団体の署名を集約した。新制度に懸念の声を寄せる多くの国民の声に政府・与党が耳を傾けることなく、国会での議論も十分尽くさないまま制度変更に及んだことは大変遺憾である。

2010年にスタートした高校授業料無償制度は、家庭の経済状況にかかわらず、国が「すべての希望する子どもに後期中等教育を保障する」という理念の具現化であり、高校教育が「受益者負担」から「公的負担」に転換したことになる。政府は、2012年9月国際人権A規約の「中等教育・高等教育の漸進的無償化条項」に対する留保を撤回し、高校はもちろん高等教育に関しても、徐々に無償化していくことを国際社会に宣言した。

今回の「改正」により、高校授業料無償制度に所得制限が導入され、公立学校の授業料不徴収制度と私立学校の就学支援金制度が一本化された。すべての子どもに高校教育を国が保障する制度から、必要な子どもだけに就学を支援する制度に変更され、高校教育を再び家庭の責任に帰したことになる。国際人権A規約の重大な違反である。

2014年4月より保護者の収入の合計が910万円以上の子どもから高校の授業料を徴収することとなる。教室の中で保護者の所得によって子どもたちが二分されるという状態は、子どもたちの気持ちに微妙な影を落とし、保護者・子ども・学校現場の大きな混乱が予想される。制度の詳細はこれから、保護者・子ども・教職員に周知されることになる。新制度の対象となる現中学3年生はすでに進路選択の時期であり、進路先変更など悪影響が危惧される。また、政府は、所得制限で浮いた財源で真に公助の必要な子どもへの支援を行うとしているが、未だ予算の裏づけはない。

拙速な制度変更により、子どもたちの教育を受ける権利が狭められることは断じて許されない。真に必要な子どもが支援を受けることのできる具体の制度設計は、今後各都道府県や学校現場で行うことになる。制度の対象となる子どもたちを制度の網の目から漏らしてはならない。家庭の状況を証明するために子ども・保護者に不要な負担を与えてはならない。事務負担の増大で教職員と子どもが向き合う時間を奪ってはならない。日本教職員組合は、子どもの最善利益のために、引き続きすべての希望する子どもに高校教育を保障するとりくみをすすめていく。

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