談話

教科書検定基準の「改正」に関する書記長談話

2014年01月21日

教科書検定基準の「改正」に関する書記長談話

2014年1月20日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

1月17日、文科省は小中学校の社会科、高校の地理・歴史と公民の検定基準の「改正」を告示した。14年度の中学校用教科書の検定から適用するとしている。

基準として、新たに近現代史を扱う際に「特定の事柄を強調しすぎない」「通説的な見解がない場合は、そのことを明示し、児童・生徒が誤解しない表現にする」「政府見解や最高裁の判例などに基づいた記述をする」などを加えた。文科省は「バランスよく教えられる教科書にするため」としているが、政府見解を尊重する教科書の記述を強く求められれば、政府の考えに限定され、歴史や領土問題について一定の見解を押し付けるものとなる恐れがある。また、教科書会社が政府の意図に添った記述にせざるを得なくなり、自主規制につながることが危惧される。

「教科書改革実行プラン」が示されてから開かれた教科用図書検定調査審議会総会は2回であり、委員からは「慎重な議論が必要」との意見が出されている。また、政府見解を尊重する記述をすることに対して「国定教科書につながるものになることが危惧される」との意見も出されている。また、パブリックコメントは非常に短い期間での実施(12月25日~1月14日)であり、その結果についても公表されていない。教育的・学問的な観点から十分な議論を尽くしたとはいえず、あまりに拙速で結論ありきと言わざるを得ない。

日本教職員組合はこれまで、近現代の歴史については、加害と被害両面からの視点が必要であることや、様々な専門的見地や他国の見解などをバランスよく記載することを求めてきた。
 教科書は、子どもたちが国際理解を深める視点で、客観的に史実を学べるものでなければならない。画一的な見解の押し付けにつながらないよう、政府見解に特化せず、さまざまな見解を教科書に記載するとともに、透明・公正な教科書検定制度の確立を強く求める。

以上

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