談話

九電川内原発の再稼働に抗議する書記長談話

2015年08月11日

九電川内原発の再稼働に抗議する書記長談話

 2015年8月11日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

8月11日、過去1年10ヶ月にわたり全国で一基の原発を稼働することなく市民生活にも影響を及ぼさず、また国民の約6割が再稼働に反対している中、九州電力は川内原発1号機の再稼働を強行した。東電福島第一原発事故の現実から目を背け、住民の命と暮らしを危険に晒す暴挙に断固抗議する。

東電福島第一原発事故後、国は原発の30キロ圏内の自治体に防災・避難計画づくりを義務付けるとともに、「住民の安全や防災計画に対して第一義的に責任を負うのは当該地方自治体」としている。それを受け川内原発周辺の7市2町は、防災・避難計画を作成したものの、その検証は行われず実効性は極めて疑わしい。また、川内原発事故発生の際、10~30キロ圏の病院・老人福祉施設227施設については、鹿児島県が事故後にコンピューターで避難先を探し、個別連絡するとしている。住民の命と安全を守るべき自治体が、自らの責任を放棄し、非現実的な計画を根拠に再稼働を容認していることに強い憤りを感じる。

安倍首相は「世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく」としている。しかし、田中俊一規制委員会委員長は「世界最高水準とか世界最高というのは、政治的というか言葉の問題」「安全だということは申し上げません」としている。また5月には福井地裁が、新規制基準を「緩やかにすぎ、これに適合しても原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くもの」と厳しく指摘している。さらに川内原発の安全審査基準には、桜島、霧島山、阿蘇山の火山噴火の詳しい影響予想などが考慮されていない。原発の安全性が全く担保されず、責任転嫁に終始する無責任な体制で、犠牲を住民に強いる再稼働は断じて容認できない。

現在、政府は、原発で過酷事故などが発生した場合の労働者の緊急時被曝限度を100mSvから250mSvに引き上げ、生涯1000mSvを容認しようとしている。さらに自治体職員まで緊急時被曝限度の緩和を検討し始めている。また、再稼働を直前に控えた8月5日に原子力規制委員会は、九電川内原発1号機の老朽化対策について、不完全であるにもかかわらず十分に審査することなく追認した。福島で見られたように一旦事故が発生した際には、広範囲に多大で膨大な被害を及ぼしかねない再稼働に、電気事業者と一体的に邁進する原子力規制委員会の姿勢は、決して許されるものではない。

「エネルギー基本計画」において原発を重要なベースロード電源と位置づけ、原発回帰の姿勢を明確にしている安倍政権と、それに追従する原子力規制委員会・電気事業者によって新たな原子力神話が生み出されようとしている。

日本教職員組合は、福島原発事故を過去のものとし国民の命と暮らしを犠牲することを断じて認めない。「核と人類は共存できない」との立場で、川内原発の即時停止を求めるとともに、再稼働の中止と再処理からの撤退、核廃棄物の安全な処理の促進、再生可能エネルギー政策への転換など脱原発社会実現へ向けたとりくみをより一層強化していく。

                                                                                               以 上

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