談話

「徳島県教組書記局襲撃事件」の高松高裁判決に対する書記長談話

2016年04月28日

「徳島県教組書記局襲撃事件」の高松高裁判決に対する書記長談話

 2016年04月27日

 日本教職員組合書記長 清水 秀行

「在日特権を許さない市民の会(以下、「在特会」)」の会員らが2010年4月、四国朝鮮初中級学校を支援したことに言い掛かりをつけ、徳島県教組(以下、県教組)書記局に対して民族差別や人種偏見に満ちた暴力行為に及んだことに対し、県教組と当時の書記長が「在特会」側に慰謝料などの賠償を求めた訴訟の控訴審判決が、25日高松高裁(生島弘康裁判長)であった。

判決は、人種差別を認定しなかった一審(徳島地裁)判決を破棄し、「在特会」のメンバーによる暴言は人種差別にもとづく行為であったと明確に認めた。また、県教組と元書記長に対する事実無根の日本教職員組合の「子ども救援カンパは募金詐欺」をはじめとした数々の誹謗中傷を明確に名誉棄損であると判断した。本判決が、「在特会」らの行為は悪質かつ重大なものであり、差別の対象とする在日朝鮮人・韓国朝鮮人を支援する者は、様々な被害を蒙るということを広く一般にしらしめ、その支援活動に委縮効果をもたらすことを目的としたものと認めていること、また、日本人である元書記長及び県教組に対する差別行為についても、在日朝鮮人・韓国朝鮮人に対する民族差別・人種差別であると認定したことは、本件事案を正当に評価したといえる。

襲撃事件から6年が経過した。県教組は19人を刑事告訴し、2010年12月、徳島地裁によって6人の建造物不法侵入・威力業務妨害の有罪判決が確定し、「在特会」の全国的な組織的犯罪の実態が明らかにされた。しかし、襲撃犯2人については不起訴処分となり、名誉毀損も認定されなかったことから、検察審査会に審査を申立て、2012年6月、「不起訴処分不当」の議決を勝ち取った。その後、損害賠償を求める民事訴訟を提訴し、徳島地裁の一審判決を経て、今回の高松高裁完全勝利の判決に至った。この間の差別・排外主義を許さない不断のたたかいをすすめてきた県教組に敬意を表する。

「在特会」に関しては、京都朝鮮第一初級学校周辺での街宣活動が人種差別であると認定した最高裁判決が14年12月に確定したが、未だに、在日朝鮮人・韓国朝鮮人などマイノリティを標的とする侮辱的、脅迫的なヘイトスピーチが全国各地で繰り広げられており、インターネット上でも差別表現が流布されている。「在特会」らの行為は、レイシズム・排外主義にもとづく卑怯極まりないものであり、決して許されるものではない。今、国籍にかかわらず多くの人たちが「在特会」のような集団に対して抗議している。また、国連社会規約委員会は13年5月、日本に対して一部の排外主義的グループがヘイトスピーチを繰り返していることの改善を求める勧告を行っている。

こうした動きもふまえて、民進党を中心とした野党は、ヘイトスピーチの禁止規定を盛り込んだ「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案(人種差別撤廃施策推進法案)」を国会に提出している。また、与党は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法案」を提出しているが、ヘイトスピーチの具体的な抑止につながる法律の早期成立が求められる。

日本教職員組合は、人権を否定し、民主主義を根幹から覆そうとするヘイトスピーチやレイシズムに断固として反対する。そして、多民族・多文化共生社会を広く構築していくため、人権が息づく学校・社会をめざし一層とりくみを強化していく。

以上

 

pagetop