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談話

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」成立に対する書記長談話

2016年05月25日

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」成立に対する書記長談話

 2016年05月25日

 日本教職員組合書記長 清水 秀行

5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」が成立した。近年、ヘイトスピーチをはじめとして、在日外国人や外国にルーツを持つ日本人などに対する深刻な人種差別が横行しており、15年5月には、野党から人種差別撤廃施策推進法案が参議院に提出され継続審議となっていた。本法は、あらゆる人種差別の撤廃に向けた施策を推進するものではないものの、ヘイトスピーチの解消が喫緊の課題であるという認識に立っていること自体は一定評価できる。

しかし、本法には看過できない問題がある。前文で「不当な差別的言動は許されないことを宣言する」としながら、本文では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」(第3条)とし努力義務を定めるにとどまっている。さらなる問題として、本法が第4条から第7条の各2項において、地方公共団体の努力義務しか定めていない点がある。罰則などの制裁がないまま、しかも相談体制の整備、教育の充実、啓発活動等ですら努力義務に過ぎないとされており、本法の掲げる施策は実効性に乏しい。地方自治体に不当な差別的言動の解消に向けた施策の実施を義務付けるべきである。

さらに、本法は「不当な差別的言動」の対象となる被害者の範囲を不当に狭めている。在留資格なく日本に滞在している、あるいは滞在の適応性を争っている外国人は適用対象外とされている。ヘイトスピーチは、個人の尊厳を著しく傷つけ、差別や偏見を醸成するものであることからその防止が求められているのであり、個人の尊厳や差別を受けない権利は、在留資格の有無にかかわらず等しく保障されなければならない人権である。また、日本の先住民族であるアイヌ民族や琉球・沖縄の人々や被差別部落といった国内のマイノリティも適用対象外とされることも大きな問題である。本法の適用対象は、人種差別撤廃条約の「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」不当な差別的言動にまで及ぶとすべきである。

日本教職員組合は、人権を否定し、民主主義を根幹から覆そうとするヘイトスピーチやレイシズムに断固として反対する。この法律の成立は、あくまで人種差別撤廃法制の最初の一歩にすぎない。ヘイトスピーチ以外の人種差別にも対処する包括的差別禁止法の制定を求めていく。そして、多民族・多文化共生社会を広く構築していくため、人権が息づく学校・社会をめざし一層とりくみを強化していく。

                                                                                   以 上

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