談話
「部落差別の解消の推進に関する法律」の成立に対する書記長談話
「部落差別の解消の推進に関する法律」の成立に対する書記長談話
2016年12月12日
日本教職員組合書記長 清水 秀行
12月9日、「部落差別の解消の推進に関する法律」(部落差別解消推進法)が成立した。
この法は「現在もなお部落差別が存在する」、また「すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものである」との認識を明示したうえで、部落差別のない社会を実現することを目的としている。また、相談体制の充実や教育・啓発、実態調査をとおして部落差別解消にむけた施策を講ずることを国や公共団体の責務としており、部落差別解消への新たな一歩を踏み出したと言える。
被差別部落をめぐっては、1965年の「同和対策審議会答申」(同対審答申)を受けた1969年の「同和対策事業特別措置法」制定以降、「地域改善対策特別措置法」「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)と、時限立法の事業法が複数回延長されながら2002年まで33年間続いたことにより、その住環境は大幅に改善された。また2000年には、差別意識解消をめざして「人権教育・人権啓発推進法」が制定され、人権・同和教育推進の基盤となっている。
しかし、昨今、住民票や戸籍の不正入手による、身元調査や土地調査、問い合わせ、さらには差別ハガキや差別文書の大量投函・ばらまきなどの事案が多発している。また、「全国部落調査 部落地名総鑑の原典 復刻版」と題した書籍をインターネット上で販売する者も現れた。
このような状況の中で、日本教職員組合および各単組も参画する中央・各地の部落解放共闘会議が部落解放同盟などとともに新たな法整備を強く求めてきたことによる今法制定である。
しかしながら、差別行為、差別言動、差別を商う行為の防止策や禁止策を伴わない現行法制度のもとでは、名誉棄損や業務妨害、器物破損などで訴えるほか、有効な対応策がないのが実情でもある。
今この時にも部落差別に苦しみ、人間としての尊厳が踏みにじられている人たちがおり、尊いいのちさえ奪われかねない状況が続いている。日本教職員組合はこの法律制定を契機として、部落差別解消にむけて「人権教育指針」にもとづいた人権教育の一層の強化をはかっていくとともに、幅広い連帯のもとに引き続き「人権侵害救済制度」の確立を追求していく。
以上