談話

独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案成立に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2017年03月31日

3月31日、「給付型奨学金制度を創設する」として、独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律が参議院本会議において可決・成立した。

これにより、国の制度としては初めて給付型奨学金ができることとなる。制度の主な内容は、18年度から本格実施として住民税非課税世帯のうち1学年2万人を対象に2万円から4万円の給付を行い、加えて社会的養護を必要とする学生に対しては入学金相当の24万円の給付を行うものである。17年度は、私立大の下宿生や児童養護施設出身者等の2,800人を対象に先行実施するとした。
しかし、対象人数や給付額は、すべての子どもの学ぶ権利を保障し、進学を後押しする制度としては不十分な内容である。また、衆議院文部科学委員会での12の附帯決議、参議院文教科学委員会での14の附帯決議でも明らかなとおり、推薦の基準、国立大学での授業料減免での減額措置、財源確保などの課題も多い。特に参議院の附帯決議に「・・・学校の事務負担を軽減する観点から、給付型・貸与型にかかわらず、その簡素化を進めること」と学校現場の実態に即した項目が盛り込まれたことも含めて、引き続き日政連議員などと連携してとりくみをすすめる。

政府がすすめてきた新自由主義による構造改革路線が深刻な貧困と格差をもたらし、貧困の連鎖による所得格差、地域格差等によって子どもたちの教育への機会均等が奪われている。日教組は、この間、子どものゆたかな学びや育ちの保障、「子どもの貧困」を解決するために、給付型奨学金の早期実現にとりくむとともに、子どもの貧困対策法の実効化や子どもの権利条約、中等教育・高等教育の段階的無償化を求めた国際人権規約の具現化を訴えてきた。また、高校等就学支援金制度と同じく、創設される給付型奨学金制度にも朝鮮学校が該当しない問題を指摘してきた。
貧困の連鎖を断ち切るためには、給付型奨学金制度の拡充や大学等の授業料引下げ、貸与型奨学金の有利子から無利子奨学金への転換、返還困難者への救済措置、国立大学法人運営費交付金・私学助成の拡充などの施策が必要である。

給付型奨学金制度が創設されたことは、私たちの運動の成果として一定の評価をするが、進学を希望するすべての子どもたちに教育を受ける権利を保障するため、引き続きとりくみを強化していく。
以上

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