談話

「テロ等準備罪(共謀罪)」新設法案の閣議決定に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2017年03月22日

 政府は21日、過去3度廃案となった共謀罪と同趣旨の「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法改正案」を閣議決定した。「国際組織犯罪防止条約」(TOC条約)の批准のために不可欠とし、2020年の東京五輪のテロ対策を口実としているものの、すでに、テロ防止関連13条約を締結し国内法も整備されており、法案の新設をする理由はない。

 法案は、一定の犯罪の実行を目的とする「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」が団体の活動として、重大な犯罪の実行を計画し、資金または物品の手配、関係場所の下見などの「準備行為」を行った場合などに、計画に合意した全員を処罰するとしている。「一般市民が対象になることはあり得ない」としているが、普通の団体が性質を一変させた場合は組織的犯罪集団になり得るとした。政府に批判的な団体を恣意的に対象とする恐れや、少なくとも萎縮させる懸念は払拭できない。
 また、何が「準備行為」となるかの判断も捜査当局に委ねられる。犯罪が公然化する前の計画や準備の段階で摘発するには、日常的な会話や電話の盗聴(傍受)、電子メール等の通信記録の収集が必要になる。「テロ対策」の名の下に私たちの生活や活動が監視されることは、日本を監視社会へと変貌させることになる。法案は、憲法の保障する思想・信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威であり、断じて容認できるものではない。

さらに、法案は277の罪を対象とし、人権を制約しかねない刑事罰は必要最小限に留めるという謙抑制の原則や犯罪行為が既遂の場合に処罰するという原則などの刑法の基本原則を揺るがすものである。広範な犯罪を計画段階で処罰することは、日本の刑法体系を大きく変質させることになる。

「テロ等準備罪(共謀罪)」は、現代の「治安維持法」であり、憲法にもとづく自由な政治活動が取り締まられ、市民社会の弾圧によって権力が強化されることになる。
日教組は、「テロ等準備罪(共謀罪)」に断固反対し、平和フォーラムとともに廃案にむけとりくみを強化していく。

                                
 以上

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