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2017/02/02

教育研究全国集会とは

教育研究全国集会(きょういくけんきゅうぜんこくしゅうかい)とは、略称を全国教研(ぜんこくきょうけん)と言い、日本教職員組合が年に一度開催する、全国的な教育に関する研究集会です。1951年以来開催されています。

まず、全体集会が開催されます。全体集会では、基調報告や記念講演があり、課題などを全体で共有します。

次に、分科会が開催されます。分科会は、「日本語教育」「外国語教育」「理科教育」などの教科に関するものと、「人権教育」「障害児教育」「平和教育」など課題別になっているもの、さらにその時々の教育課題に応じた「特別分科会」などに分かれています。

 

東日本大震災後、初の被災地開催

2月5日から7日にかけて、岩手県内において教育研究全国集会を開催しました。全国から、のべ1万人が参加しました。東日本大震災後、初めて被災地で開催された全国教研。全体集会、特別分科会、各分科会でのリポート討論など、教研のあらゆる場面で被災地のその後について参加者で共有しました。

全体集会に先駆け、岩手と福島から東日本大震災後の子どもたちや教職員の現状、課題に関する報告がありました。

岩手から…

「あの東日本大震災大津波の被災からもうすぐ5年のときが経とうとしています。『震災から2年』『3年6か月』『月命日』…。

こんな言葉はいつになったら使われなくなるのでしょう。使われなくなることがうれしいことなのか、震災の風化に抗うべきなのか私には正直、まだ分かりません。

『復興』とは何だろうか?何がどうなれば『復興した』と言えるのだろうか?これは、沿岸被災地の学校に勤務し、自らも被災地に住んでいる仲間からの問いかけです。道路が通ること…。学校が再建されること…。自宅が再建されること…。被災し失ったものは、人それぞれで違います。ですから『復興』もそれぞれの状況によって違うのかもしれません。一人ひとりの心の『復興』はなおさらです。

あの瓦礫の中から学校は一歩一歩日常の生活へと歩みを進めました。運動会、学習発表会、授業参観…。避難所となった学校で一緒にくらす地域の方々は、子どもたちが精いっぱい、走り、笑い、転び、泣く、そんな子どもたちの姿をみて、感動し涙していました。当たり前に学校で繰り返される子どもたちの日常がどれだけ保護者や家族、地域を勇気づけることなのかを目の当たりにしてきました。

『子どもは地域の宝』『学校は地域の夢を育むところ。未来そのもの。』

あの震災を経験し、被災地で働く私たちは、この言葉を身に染みて経験することができました。

ですから、日常生活の中で、子どもたち一人ひとりと向き合う時間を奪うもの、向き合う教職員の心を奪うもの、子どもたちにやさしく接してあげることができるための心身ともに休養できる時間を奪うもの、これらを注意深く拒まなければなりません。

それが被災地で働く教職員の使命であると思っています。」

福島から…

「原発災害の発生から間もなく5年が経過しようとしています。今も10万人もの人々が県内外での避難生活を強いられ、18歳未満の子どもは、約22,500人もいます。住民の帰還は、被災自治体の存続にかかわる問題です。被災自治体では、除染・インフラの整備のほか、災害前の校舎での学校再開準備も急いでいます。しかし、子どもの進学や家族の健康の問題で現状の生活を変えることができないなど、元の生活には、簡単に戻れない人が多くいます。

現在、臨時移転している学校は、小学校18校、中学校10校あります。子どもの数は災害前の20%にも満たない状況で、なかには2%に満たない学校もあります。さらに浪江町の小学校4校と中学校2校は未だに臨時休業のままです。今後子どもたちが戻ってくる可能性も期待できません。

県教委に対し、子どもたちの無用な被ばくを避け、安全確保を求める要請を続けています。健康の不安を抱えて生活をしていかなければならないのは原発のせいであり、原発災害のもっとも重大な部分です。低線量被ばく、除染廃棄物の問題は、今後も長く続きます。

『福島の風化』が進んでいます。しかし、福島の課題は、たくさんあります。今後も皆さんの支援を受けながら、とりくみを進めていきたいと思います。福島の原発震災を忘れないでください。」

全体集会では、加藤良輔中央執行委員長が主催者あいさつを行いました。

「あれから5年が経過しようとしています。あの震災と福島の原発災害からです。

復興は未だその途上にあります。『フクシマ』を繰り返してはならないという思いも、再稼働の流れの中で踏みにじられようとしています。今回の全国教研をここ岩手の地で開くこと。それは震災の過酷な経験を、そして、あの時日本中の人々や日本に心を寄せてくれた全世界の人々が胸に抱いた、『原発に頼る社会のありようを変えよう』という誓いを、私たちは決して忘れないというメッセージだと思っています。

自らの意思ではなく故郷を離れざるを得なかった子どもたちがいる。放射線量を気にしながら生活しなければいけない子どもたちがいる。そうである限り私たちは子どもたちの生活に寄り添いながら教育という営みを通して社会に訴え続けなければいけないと、思いを新たにするのです。

委員長あいさつに続き、白井聡さんによる記念講演「ネオリベ文化に抵抗する教育」が行われました。

 

特別分科会の様子

「おとなシンポジウム」と「子どもシンポジウム」の2部構成で開催しました。

「おとなシンポジウム」では、震災の記憶の共有化、そして、震災を受けて子どもの生活実態から教育課程をつくりあげていく、という話が交わされました。

「子どもシンポジウム」では、学校や生活のなかで「うれしいこと」や「こまっていること」をもとに、学びやくらしを支えている「大切なもの」について話し合いました。シンポジストを務めた子どもたちからは、率直な意見が出され、充実した内容でした。

 

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